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薬種狩り 五の3

「はあーっ、 そうだな。
 最悪の事態を想定して、 天狗苺が薬として使われる以前の記録を 当たっていたところだったのだが、
 それを参考にして 出来る限りの対処をするしかないな」
「昔は どうしていたのですか」
 典薬頭の言葉に、 左右衛がおざなりな問いを返した。
 期待が持てるような気がしない。

「一人発病すると、 身近な人間が次々発病する事から、
 病人を一か所に集めて 健康な人間との接触を避けたりしたようだ。
 町ごと出入りを禁止した例も 数多くあったらしい。
 天狗苺以外の薬は 全く功を奏していない。
 草楽堂のおかげで発見された 新しい薬を集めて試してみるか」

 しかし、 ほとんど駄狗の手柄になるそれらは、
 明らかに冬枯病には役に立たない物を含めても 決して多くは無い。

「先日、 若様が天狗苺を探しに行かれるような事を仰っていましたが、
 あれは どうなりましたか。
 あの駄狗が行かなかった場所です。 おそらく、 とんでもない所でしょう。
 ご注意しようと呼びとめましたが、 急いで帰られてしまい、 気になっておりました」
「大当たりだ。 とんでもなさすぎる。
 誰も行く者がいない」

 典薬頭につきあって、 左右衛まで どんよりとしかけたところに、
 騒々しい足音が近づいてきた。
 無作法にも 部屋に飛び込んできたのは 穂田里だった。
 玲の手首をつかんで 引きずっている。

「俺たちが 天狗苺を探してきます」
「待て!  『たち』って 誰の事だ」
 寝耳に水だった玲が 抗議の声を上げた。

「もちろん 俺と玲。
 典薬寮の期待の星、 なかよし二人組だ」
「僕は、 僕にできる仕事をすでに果たした。
 勝手に冒険旅行に巻き込むな。
 なかよし二人組というのも やめろ」
「照れるな」
「照れるか」
「誘ったのは玲だろ」
「君なら出来ると勧めただけだ。 僕も行くとは言ってない」

 典薬頭の表情に 明かりが灯った。
「おおっ!  典薬寮きっての肉体派、 穂田里君。 君が居た。
 たしか 武官から転向したのだったな。 確かに 君なら出来る」
 藁にもすがりたい無責任発言である。

「はい。 俺と玲が、 世界を救いに行きます!」



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