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薬種狩り 四の7

 左右衛と衣都のやりとりを聞きながら、 玲は苛々した。
 『森が死んだ』とか 『ヌシ』とか、 玲の感覚から遠くずれている。
 おとぎ話めいて、 怪しすぎる。

 とにかく、 天狗森に天狗苺は無い。
 この二人は それが言いたいだけなのだ と理解して、 話を進めることにした。

「それなら、 他に生えている、 あるいは 生えている可能性がある場所が知りたい」
 衣都は またしばしの間、 唇を尖らせた。
「おれたちが行った事のある場所には 無い」
 唯一の相棒だった父親を真似、 衣都の一人称は「おれ」だ。
 きっぱりと断言した。

「では、 これまでに行った場所を教えてくれ」
 玲は 用意してきた地図を取り出し、 前に広げた。
 その上に身を乗り出して しばらく眺めた衣都は、 人差し指を一本 地図に載せた。
 都を指す。
 衣都の指が滑らかに動き出し、 地図を滑り、 流れるように辿っていく。
 どんどん動く。
 まだまだ動く。
 いくらでも動いて行く。

 指先を追う事に飽きてしまった玲は、 遂に途中でさえぎった。
「待て。 行っていない場所を聞いた方が早いか」
「早い」
 今度は すぐに終わった。
「よし。 そこを探す事にしよう」
「全部は、 いらない」
「ん?  どういう事だ」

「ここ、 ここは岩だらけ。 地の底から毒を吹きだす。
 天狗森とは 違いすぎる」
「なるほど」
「北の一番高い山。 根雪が年中溶けない。
 天狗森とは 違いすぎる」
「他には?」
「ここは 塩の混じった砂地……」
「天狗森とは違いすぎる、 だな。
 おまえ、 見かけによらず賢いな。
 それならば、 ほんの少しでも可能性があるのは 何処だ」

 衣都が 考えながら指差したのは、 三か所だった。

「ずいぶん絞られたな。 大いに参考になった。 帰る」
「坊ちゃん、 若様。 お待ち下さい」
 左右衛が呼び止めようとする声を振り切って、
 玲は 草楽堂から飛び出していった。



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