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薬種狩り 四の5

「旦那様、 典薬寮の学生だという方が、
 そのう…… 駄狗さんに会いたいと」
 困った顔で 番頭が左右衛に告げた。

「駄狗の知り合いか」
 左右衛も難しい顔になる。
 死んだのを知って弔問に来たのか、
 知らずに会いに来たのか分からないが、 気が伏せる。

「いえ、 違います。
 薬種を見つける名人が居ると聞いて来た。
 その人にどうしても話がある と言っています。
 とびっきりきれいで、 まともに見たら目が潰れそうなほどです。
 その上 やけに偉そうな態度なので、 あたふたしてしまいました」

 左右衛はすぐにピンと来た。
 何度か見かけた事がある。
 とびっきりきれいで、 偉そうな態度の学生といえば、
 典薬頭の若様、 玲しか思い浮かばない。
「店先で帰ってもらう訳にはいかないようだ。 此処へ通しなさい」

 小僧に案内されて来た玲は、 さっそく用件を切り出した。
「めったにない薬草を見つける名人が居ると聞いた。
 会いたいので 連絡を取ってほしい」

 挨拶も無しに言い切った玲を 穏やかに迎えながら、 左右衛は答えた。
「名人の一言では不足です。 駄狗は特別でした」
 過去形の言い方に気付いて、 玲は いぶかしげに眉をひそめる。
「もう居ないのか」
「つい先だって亡くなりました。 弔いを出してから、 まだいくらも経っていません」
「くそっ、 せっかく訪ねてきたというのに、 なんて間が悪い奴だ」
 左右衛は 玲の失礼な発言に動じることなく、 駄狗が死んだ経緯を語った。

「そんな事があったのか。 実は、 天狗苺が森から消えた」
 これには左右衛が驚いた。
 駄狗が死んだ事で ごたごたしているうちに、
 天狗森開発が 一時延期になったと聞いて 一安心していたのだ。
 そんな事になっているなら、 ゆゆしき事態だ。
 幸いなことに、 ここのところ何年も冬枯病は出ていないが、 いつ襲ってくるか分からない病気だ。
 天狗苺があったからこそ 大きな事にはなってこなかったが、 無いとなれば話は違う。
 のんびりもしていられない。

「典薬寮は 何としても天狗苺を見つけなければならないのだ。
 協力を頼むつもりで来た。
 代わりになる人物が居れば、 それでも良い。 紹介してもらいたい」
「先ほど申しましたように、 駄狗は特別でした。
 代わりになる者など……」
 苦渋に満ちた顔で話していた左右衛が、 ふと 言葉を切って 裏庭に目をやった。
 若い娘が庭掃除をしている。

「いっちゃん。 ここへ来てお座り」
 左右衛が手招きで呼び寄せ、 座敷を指差した。



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