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薬種狩り 四の2

「そんなあ。 大変だ。 こんな事をしている場合じゃない。
 取り戻して、 典薬助様に提出しなおさなくちゃ」
「おい、 こら。 大事な資料を放りだすな」

 バタバタと駆けだした穂田里は 典薬頭の部屋に飛び込み、
 文机の上にあった物を引っ掴んだ。
「あっ、 違う。 これじゃない。 おお、 あった。 いかん、 いかん」

 初めにつかんだ文らしき物を、 丁寧に元に戻し、 にやりと笑った。
 自分以外にも 留守を知らずに 文を置いていった者が居たらしい。
 同類を憐れむ気持ちで手に取り、 差出人を見た。
「薬草園の管理人か。 教えてやった方が良いかな。
 おっと、 まず 課題を出さなくちゃ。
 典薬助様は 何時お戻りになるのだろう。 急ごう」

 置いて来るだけでは駄目だ。
 直接手渡して、 四日前には出来ていたのだ と釈明したい。
 もちろん ものすごく怖いが、 そうでもしなければ せっかく頑張った自分がかわいそうだ。
 おいてきぼりにしてきた玲も 気になる。
 最後まで手伝ってやらなければ、 毒気と罵詈雑言ばりぞうごんで 資料室が染まってしまう。
 そこまで片付けたら、 薬草園に教えに行ってやろう。
 親切は大事だ。

 間もなく 典薬助を捕まえた穂田里は、
 中途半端な言い訳が、
 如何に 無益、 つ 墓穴を掘る愚かな行為かを 身にしみて学ぶ事になった。
 さらに進化を遂げた罵詈雑言を 全身に浴びながら、 深く反省したが、
 時すでに遅い。
 刺激も強すぎると、 己の精神を守る為か、
 はたまた 相手が 年上の 見ようによっては美女だからなのか、
 そぞろ快感にすり変わろうとするのを、
 (駄目だ!  このまま流されては 人生を踏み外して、 いけない方向に行ってしまいそうだ)
 という予感に震えて、 危うく踏みとどまった。

 げっそりしながら 何とか受け取ってもらい、 次に向かったのは資料室。
 そこでも、 玲に 言いたい放題 悪しざまに文句を並べたてられ、
 傍から見れば、 立派に被虐趣味の変態に見えてしまっているのでは、
 と にわかに心配がつのる。

 おかしな心配に頭を乗っ取られ、
 薬草園の管理人に 典薬頭の留守を知らせるつもりだった事など
 すっかり吹っ飛んでしまった。



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1567:管理人のみ閲覧できます by on 2013/08/16 at 22:37:38

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1569:Re: 鍵コメえる様 by しのぶもじずり on 2013/08/16 at 22:54:12 (コメント編集)

こちらこそ、ごめんなさいかも。

穂田里という名前は(も、というべきか)性別が分かり難い名前ですよね。
その上登場シーンがメルヘンチックな上に、はっきり男の子だと書いてなかったです。
私のほうが作者の思い込みで、説明不足でした。

ちゃんと分かるように書くべきでした。
薬草園での、玲と穂田里のやり取りだけでは足りませんでしたね。

【一】の改稿を検討します。
ありがとうございます。

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