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薬種狩り 三の3

「まだ あきらめていないのかい。
 駄狗さんが言うと、 本当に 見つけそうに思えてしまうね。
 まっ、 当人がやりたがっているんだ。 考えてみておくれ」

 小僧が茶を運んできた。
「もったいないが、 しょうがない。
 旦那様が 出すようにおっしゃるだろうからと、 番頭さんが……」
 余計な事を言って 物珍しそうに二人を眺めたが、
 左右衛の顔色を読んだものか、 慌てて二つの湯呑を置いた。

「まずは 一服おあがり。
 良い茶葉を仕入れたんだ。 旅の疲れが取れるよ。
 ほら、 いっちゃんもおあがり」
 左右衛に勧められるままに 駄狗が湯呑を持ちあげれば、
 なるほど 極上の香りが鼻をくすぐる。
 効能は穏やかだが、 茶は良い薬だ。
 第一飲みやすい。 それどころか 飲むのが楽しみでさえある。
 ひとしきり香りを楽しみ、 口に運ぼうとした頃合いを計ったように、
 小僧の抑えきれなかった好奇心が、 ぽろりと転がり出た。
「久しぶりの都は どうですか」

 言ってしまってから、 しまった というように首をすくめたが、
「変わらんな」
 駄狗は 口に持って行きかけた茶碗を離し、
 無愛想ながら 返事をした。

「もうすぐ変わりますよ。 南に 桃源郷のような一角が出来るらしいです。
 幾日か前から 天狗森にきこりが入ったみたいだから」
 返事があった事に気を良くして、 小僧は得意げに続けたが、
 次の瞬間、 浴びせられた怒声に ひきつった。

「馬鹿な!」
 湯呑が駄狗の口にたどり着くことなく 止まった。
 顔色が変わっている。

「忠助、 その話は本当なんだろうね」
 左右衛が 丸い顔を憤怒に変えて 小僧に詰め寄った。
 小僧は面食らいながらも、 必死の形相で 首を縦に振った。
「ひっ、 さっき、 お、 お客様が……」
 話を置いていった客の名前を聞けば、 根拠のない噂を流す人物ではない。

「なんという事だ! 
 話を聞いた時から あんなに反対して、 上奏文まで出したのに。
 分かって無かったのか。 無茶な。
 止めさせるよう、 急いで おかみに掛け合って来る」

 左右衛が動き出すより早く、
 駄狗は 湯呑を放りだすように置いて 外に駆けだした。




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