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薬種狩り 二ノ1

 典薬寮が管理する薬草園に 天狗苺を植え終わった穂田里は、
 土に汚れた手をそのままに、 もう一度 一本一本を丁寧に点検した。

 丈夫そうな若い苗を まわりの土ごと掘り出し、
 特に根元を傷めないよう 注意して運んできたものだ。

 天狗苺の為に用意された場所は 思いのほか広かったので、
 何度か天狗森を往復したが、 怪しい植物はあれきり姿を見なかった。
 やはり 夢を見たのか と少し疑心暗鬼になりかかっては、
 いやいや確かに見た、 と自分を励ました。
 機会があれば、 何度でも探しに行きたい と心中ひそかに思っている。

 典薬寮の学生たちは 薬師くすしの子弟が多い。
 近頃は 医師という言い方も増えたが、 どちらも同じようなものだ。
 その中にあって、 武官の子である穂田里は異色である。
 幼い頃から 体をきたえるよう育てられたから、
 学問ばかりに明け暮れて育った他の学生とは 体の出来が違う。
 一見 すらりとした見かけよりも 強靭な肉体をしているし、
 体力も 人並み以上どころか 普通の武官並み以上と言えた。

 だから 典薬寮で力仕事となると、 どうしても穂田里に声が掛かる事になる。
 体を使うことが苦ではなかったから、 言われれば 素直に何でもやった。
 もはや 学生と言うより 肉体労働者の如くである。

「また 得意の力仕事か」
 皮肉っぽい声が掛かった。

 振りかえれば れいである。
 同じく典薬寮の学生で、 年は一つ下だが 入寮したのは玲の方がだいぶ早い。
 ご多分にもれず 華奢きゃしゃな体の持ち主だ。
 切れ長の涼しげな目に 生意気そうな唇、 つんと澄ました鼻の美少年だから
 それで良い と穂田里は思っている。
 その顔で 筋骨隆々としていたら似合わない。

 年下とあなどったつもりもなく、 玲の優秀さは 初めから認めているのだが、
 何故か 時々突っかかって来る。
 いつも偉そうな態度で 他の学生を歯牙にもかけないようなところがある男だ。
 典薬頭の息子なのだが、 それを鼻にかけているというのとは ちょっと違う。
 もともと 他人を気にしない性格らしい。
 先生であり 父親である典薬頭さえも、 たいして尊敬しているようには見えないのだ。
 それがどういうわけか 穂田里だけは気にかかるらしい。

「天狗苺をこんなに植えて 何をするつもりだ」
「知らん。 典薬頭様の言い付けだ」
「理由も聞かずに 面倒な作業を引き受けたのか。
 ふん、 穂田里らしいな」



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コメント
1541: by ネット on 2013/08/05 at 01:04:08 (コメント編集)

ライバルの登場ですか~続きを楽しみにしています♪
↓葉影小人草は、悲鳴をあげるマンドラゴラを思い出しましたね^^

1542:Re: 玲 by しのぶもじずり on 2013/08/05 at 09:37:21 (コメント編集)

ネット様 いらっしゃいませ。

ほほ~う。マンドラゴラですかあ。
作者としては、もっとほのぼのしたイメージをしていたのですが、
そうですよね、走って逃げるんですものね。不気味かも。

そうやって色々想像して頂けると、うれしいです。
考えた甲斐があります。
「薬種狩り版 幻想植物名鑑」をまとめ中です。
そのうちUPしようと思います。

コメントをありがとうございました。

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