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赤瑪瑙奇譚 第四章――2



 祝賀式典は、 大広間において 厳粛な雰囲気で始まった。

 宮廷の主だった臣下はもちろん、 国のさまざまな要職にある人々が招待され、
 いっぱいに埋め尽くされている。

 その中で 一際華やかに目を引いているのは、 来賓席のユキアだ。
 一見 何気なく見える衣装は、 山繭(やままゆ)の糸から織られた絹。
 ごく淡い黄緑色の深い光沢を放って、 気品ある華やかさを 振りまいていた。
 髪も若い姫君らしく 豪華に結い上げられ、 胸には翠玉の 「妖精王の瞳」 が輝いている。
「徹底的に目立たない 地味なお姫さま」 を目指していたとは、 到底 誰も思うまい。
 仕度をしているとき、 メドリも驚いたほどだ。

『この翠玉の首飾り、 初めてお付けになった時よりも、 さらにお美しく見えますね。
 ユキア様のために誂(あつら)えたかのようですわ』

 例によって、 こっそり赤瑪瑙も帯に絡めて 見えないように挟んであった。
 もう すっかり馴染んで、 持っているだけで 安心するようになっている。
 大勢の人々で あふれかえる広間で、 一番目立っているのは、 間違いなくユキアだった。
 
 広間のざわめきは、 そのほとんどが ユキアに対しての賛辞だった。
 その中にまぎれた、 一つの 呟き。
「……翠(みどり)の宝玉……」

 そしてただ一人、
 一身に注目を集め続ける姫君に、 最初から最後まで 目を向けようともしない人物がいた。
 カムライ皇太子だった。

 式典が終わって、 夕方からは 晩餐会が催された。
 カムライの隣はユキア、 正面にはイマナジが、 その隣には メギド公の席になっていた。
 ユキアは 髪をおとなしい感じに 結い直している。

 メギド公は 何かと周りに話しかけ、 がさつな話題を振りまいていた。
 容貌は悪くないのに、 会話の下手さ加減が いっそ 気の毒な気がする。

「姫の首飾りは 見事ですな。 翠玉ですかな、 さぞや高価なんじゃろうなあ」
「妹が 誕生日にくれた 贈り物です。 『妖精王の瞳』 という名前がついています」
 発声練習の成果で、 透き通るような声で 柔らかに答えるユキアに、
 イマナジの目が、 ほんのわずかに見開いた。

 気づかないメギド公は、 かまわず後を続ける。
「一番大事にしているのじゃろ」
「いいえ、 一番ではありませんが、 大切にしています」
 言いながら、 帯に手を当てた。 一番はそこにある。

「ほう、 やはり 緑色の宝玉ですかな」
「……いいえ、 緑ではありません……」
 妙な聞き方をする。 緑色がどうしたのだろう と訝(いぶか)しんだ。

 もしも このとき、 『一番はどんな石ですか』
 と さりげなく聞いていたなら、 話の展開が 多少は 変わっていただろうか。
 質問が がさつに過ぎた。


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by まとめwoネタ速neo on 2012/05/25 at 21:53:07

 祝賀式典は、 大広間において 厳粛な雰囲気で始まった。 宮廷の主だった臣下はもちろん、 国のさまざまな要職にある人々が招待され、 いっぱいに埋め尽くされている。 その中で

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