RSS

迷惑な子ども――6


 その後は、 特に悪さをするでもなく、 真剣に撮影を見学していた。
 子どものくせに、 よく飽きずに見ていられたものだ。

 旅館に戻って食堂に行けば、 一番乗りだった。
「他の人が来る前に 食べちゃって」
 女将が、 鯛の兜煮を出してきた。
「一つしかないから 今のうちにね」
 毎日残さず食べ、 お代わりすることに 気を良くしたようだった。
 それからは、 目立たないようにだが、 毎食、 他の人よりおかずが一品増えた。


 四日目。
 旅館の女将さんが、 買い物の途中に声を懸けてきた。

 そして午後、 悪ガキが登場した。
 真っ直ぐに スタジオに来た。
 周りをうろちょろして、 やはり真剣に見学している。
 よほど気に入ったらしい。
 正直に言えば、 少々邪魔だが、
 この調子だと、 星子が居る間は、 他の売り場で怒鳴られることも無いだろう。
 本来の仕事の他に、 悪ガキの様子をチェックしなければならないのが余分だが、
 高橋がしっかりしているので、 さほどの負担ではない。

 日が暮れかかる頃、 客足が途絶えた。
 ふと見ると、 悪ガキが、 大きく開いたウインドウに向かって、
 憮然としたように突っ立っている。

「どうした?」
 声をかければ、 不機嫌そうに一言。
「母親」
「えっ?」
「あれ、 母親」
 嫌そうに指差す先に、 ばっちりメイクで ドレスアップした女性が、
 ハイヒールを蹴たてて 颯爽と、 駅の方向に歩いているところだった。

「今からお出かけかあ。 きれいなお母さんだね」
「きれいじゃない。 ブスだ」
 睨みつけるようにして、 目を離さない。
「きれいだよ」
 星子は それしか言えなかった。

 母親には母親の事情があるのだとしても、 星子は何も知らない。
 子どもの服が しみだらけで薄汚れているとしても、 とやかく言える立場でもない。
 星子が知っている悪ガキの母は、 目の前を 颯爽と歩く姿だけだ。
 親だからといって スーパーマンになるわけじゃないと言っても、
 子どもには関係ないし、 しらじらしいだけだろう。

 だから、 それしか言う言葉が無かった。
「きれいだよ」



戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
1506: by 茶坊たがわ on 2013/07/26 at 21:28:31

こんばんわ

毎日楽しみに読ませていただいています。

歌手・俳優の福山雅治さんは何でも手に入れている恵まれた人とばかり思っていましたら
「父親が嫌い」だったのだそうです。
博打好きのとんでもない人だったようです。
それ以来、彼から目が離せなくなりました。

この悪がきの心の闇に星子はどう向き合うのでしょうかね。

1507:Re: 茶坊たがわ様 by しのぶもじずり on 2013/07/27 at 16:55:00 (コメント編集)

いらっしゃいませ。コメントをありがとうございます。

次が最終回になります。
どうしましょう、納得しとぃただけるか心配になってきました。> こんばんわ

福山雅治さんの事は詳しくありませんが、
あの端正なルックスのわりには、案外父上のバサラなDNAが受け継がれているような気もします。
お酒も強そう。自分でお酒を作るくらいですから。

親子って、不思議で面白いです。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア