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迷惑な子ども――5

 調子よく働いて 夕方。
 好事魔多し。
「ねえ、 なにやってんの?」
 足許に近いところから、 悪そうな声が聞こえた。
 例の、 ちっちゃな悪ガキである。

「写真を撮ってるんだよ」
「ふううん、 じゃあ、 とって」
「お母さんかお父さんに 申し込んでもらわないとね。
 子どもを、 勝手には撮れないのよ」
「ちぇっ、 しょうばいだからでしょ」
「正解」
 小学生になるやならずの年頃である。
 それにしては、 言うことが いちいち生意気だ。

 撮影用の仮設スタジオには、 被写体を座らせるために、 ラグを敷いた台がある。
 動きやすい子どもを、 じっとさせておく目的で、 高くしてある。
 小さな子どもは 簡単には上り下りできない高さだ。
 女の子は、 勝手によじ登り始めた。

 大事な商売道具を遊び場にされるのは、 大迷惑だ。
 お客さんが来る前に、 何とかして どかさなくてはならない。

 幸い 客足は途絶えている。
 食品売り場は賑わっているようだが、 スタジオ付近には流れてこない。
 黙って 放ってみた。
 かなり苦戦していたが、 登りきって座り、 得意げに笑う。
 身体能力と根性は なかなかのものだ。
 どういう子なんだろう。
 しばし観察する。

 子どもの自然な笑顔を写真に収めるのが、 星子の仕事だ。
 カラーボールの一個もあれば、 指先一つで操って見せ、
 たちまち笑わせることくらいできる。
 泣きわめいている子を、 一瞬で泣きやませる技もあるが、
 泣いた後の顔は 良い写真にはならないので、 泣かせないことが肝心だ。
 子どもの扱いは知っている。
 しかし、 この子は 一筋縄ではいきそうにない。
 プロの勘だ。

 無論、 悪さをしたからといって、
 怒鳴りつけるなど、 この商売では もってのほかだ。
 店内には、 お客さん候補が歩いている。
 店員の目だってある。
 子どもを預けても安心だ、 と思ってもらわなくてはならない。

「よく来るの?」
「うん、 まいにち」
 質問すれば、 そっけなく答えた。
 態度が一人前だ。 全然子供っぽくない。
「暇なんだ」
「まあね」
 バイトの高橋は、 口を挟まずに見ている。
 勘の良い子だ。

「学校は?」
「らいねんから」
 おいおい、 学齢前でこの態度か。
「そうか。 じゃ、 暇だね。 よいっしょっと」
 言いながら、 星子も隣に腰かけた。

「うん、 ひま」
「今日は いい天気だよ。 外で遊ばないの?」
「あそばない」
 二人で、 足をぶらぶらさせながら、 しばらく どうでもいいことを話した。

「さあて、 そろそろ仕事をしないとね。
 はい、 お仕事 お仕事」
 悪ガキを抱き下ろせば、
「おしごと、 おしごと」
 そうだよ、 サボってばかりじゃ駄目じゃん、 みたいな目つきで ニヤリとした。



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コメント
1504:訪問ありがとうございます by Silver≠Ⅶ on 2013/07/26 at 14:58:39 (コメント編集)

とても素敵なお話ですね。
悪ガキなのに純粋な子供の愛くるしさが表現できてます。
僕もいつかはこんな小説書いてみたいです。

1505:Re: Silver≠Ⅶ様 by しのぶもじずり on 2013/07/26 at 17:38:07 (コメント編集)

こちらこそコメントをありがとうございます。
恥ずかしながら、私、マリオをいちどもクリアしたことがございません。
とことん反射神経と瞬発力が無い奴です。

Silver≠Ⅶさんは、指さばきとかすごいんでしょうね。うらやましいです。

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