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迷惑な子ども――4


 件の女の子は、 怒鳴られても悪びれることなく、
 あかんべえをして 売り場を少しだけ離れた。

 しかし、 生意気そうな顔で、 近くをウロウロしはじめ、
 特に逃げるでもなく、 帰ろうとする素振りも無い。
 垢じみて、 汚れのしみついた服で、 肩をそびやかせる。
 怒鳴られるのも慣れている様子だ。
 どうやら ここは、 困ったチャンのいる店のようだ。

 数ヶ月前に行ったデパートでは、 子ども服売り場に隣接された 婦人服売り場で、
 女性マネキンのスカートの下を 一体残らず覗いておかずにはすまない 変態青年が出没していた。
 あの青年は、 スカートをめくれば気が済むようで、 おとなしいものだったが、
 この店の困ったチャンは、 なかなかにアクティブなタイプだ。
 積極的に悪さをしては、 店員を怒らせるのを趣味にしているようだ。
 土産話が増えそうだ。

 持ち場に戻ってみれば、
 見本写真を眺めている親子に、 チラシを 出したり引っ込めたりしながら、
 踏ん切りを付けられないでいる 町が居た。
 楽しいトークで、 そのお客さんをゲット。

 町は あまり役に立たなかったが、 初日は こんなものだろう。
 女子高生だし。

 星子は、 仕事を終えた旅館で、 勧められるままに、 ご飯のお代わりをした。
 食堂には、 他に、 作業服姿の若い衆が静かに食事をしている。
 近くの工事現場で 作業をしているようだ。
 女将が、 しきりにお代わりを勧めたが、 固辞している。


 翌日、 出勤したら、 町が辞めたと知らされた。
 急遽 代わりを探してくれるらしい。

『あと 二枚なんです』
 チラシを握り締めた手を思い出した。
 待ってやればよかったのかもしれない。
 失敗した。

 その日、 一人で仕事した。
 万事順調に終了。
 旅館の食堂では、 お代わりを断る男たちの声を背中に、 二度目のお代わり。
 カメラマンは 肉体労働なのだ。

 三日目、 担当者が 新しいバイトの子を連れてきた。
 やるな。 対応が早い。
 当てにしていなかっただけに、 星子は少々驚いた。
 今度の子は、 やはり女子高生という事だったが、
 華奢な感じだった町に比べて、 ずいぶんでかい。
 どこもかしこも たくましそうだった。
 まったく違うタイプの子を選んだらしい。

「高橋です。 よろしくお願いします」
 挨拶も はきはきしている。
 チラシ配りをさせたら、 はい、 と短く答えて、 さっさと配り始めた。
 泰然自若として、 躊躇が無い。
 たちまち店内には、 チラシを持った客だらけになった。

 特に愛想が良いわけではないが、
 何をやらせても 落ち着いて的を射た対処をするので、 やりやすい。
 部活を聞いたら、 「弓道部です」と、 自信ありげの返答。
 なるほど、 活躍しているに違いない。
 その上、
「校長先生、 バイトをしています。
 お孫さんの写真を撮りましょう。 今日を入れて 後四日しかやってませんよ」
 買い物に来た先生に、 進んで誘いをかけている。
「いや、 残念。 今、 旅行中で 孫は留守なんだ。
 バイト頑張りなさい」
 校長先生が、 にこにこしながら、 本当に残念そうに言った。
 自慢の生徒なのだろう。



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