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天州晴神霊記 終章――2

「重い……んですけ……ど。 まだ重ねる気ですか」

「これで おしまいです」
 花嫁たちは、
 それぞれ 三人がかりの力技で 古式ゆかしい花嫁衣装を着付けされた。
 身動きするのも ままならない。
 昔の花嫁は 体力勝負だったらしい。

 様子を見に来た一夜姫が、 斎布のボヤキを聞き咎めた。
「今から弱音を吐いてなんとする。 勝負はこれからじゃ。
 支度ができたようじゃの。 そなたらは下がってよいぞ」

 着付けをした者たちが出ていくと、 斎布は遠慮なく 物言いをつけ始めた。
「それに この化粧。 やりすぎていませんか」
 眉を剃り落とされ、 真っ白に白粉を塗られ、
 本人の唇とは関係なく 真っ赤な紅で おちょぼ口が塗られている。
 鏡を見た時は、 うっかり「はじめまして」と挨拶しそうになってしまったくらい
 誰なんだか判らない。

「古式ゆかしい宮廷風の化粧法じゃ。 わっはっはっは」
 八箭(やや)が 冷たい視線を送ったが、 一夜姫は平気だ。
「これなら、 八箭殿を見て気絶する 馬鹿な男どもも大幅に減るじゃろう。
 安全対策じゃ」
「私のほうが白い気がするのですけど」
 斎布は納得がいかず、 頬を膨らませた。

「その通りじゃ。
 阿古屋騒動の夜、 衛士や近衛兵等はもちろん、 騒ぎに目を覚ました者どもが見ておる。
 天駆ける白馬に乗った姿をな。
 伝説の霧呼姫は、 我が天州晴の切り札じゃ。
 正体を知られぬほうがよい」

 八箭が、 そういうことなら と納得したように、 少し微笑んだ。
 白塗りでも美しいのは どういう仕掛けだろう。

「お支度が済みましたら、 ご案内いたします」
 部屋に入ってきた気配とともに、 志信の声がした。
 やっぱり こき使われているらしい。
 いつもより 口調が格段に丁寧だ。
 どんな顔をして言っているのか見てやろうと、 斎布は 視線だけを声に向けた。
 振り向くのもしんどい。

「えっ、 ええっ――!」
 顔は よく見ると志信にそっくりだが、
 古式ゆかしい侍女の衣装を着ているし、 薄化粧までしている。
 どこからどう見ても 女の子だ。

「わっ、 お天気お姉さんだ」
 跳び退って 構えた姿と、
 『白塗り』に、 お天気お姉さんと反応するところは 志信に間違いない。

「…………志信?  何、 その格好」
「こわっ。 おお、 声が確かに霧呼様だ。
 似合うだろ。 絵草紙屋が言ったとおりだな。 俺って 春風桜乱より美人だ。
 約束しただろ。 霧呼様は俺が守るって。
 付いて行ってやる」



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