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天州晴神霊記 第九章――9


 斎布は、 手に触れたものを夢中でつかみ、 仕方なく殴った。

 斑は 動かなくなった。

「あれ?  何故 こんなものが……」
 斎布は、 手にしたものを見て呟いた。


 気がつけば、 乱暴を働こうとした男たちは、
 目的を果たすことなく、 床の そこかしこに転がっていた。
 腕自慢であろうとも、 ごろつきが 四郎五郎と閼伽丸に適うわけがない。

 騒々しい足音が、 慌ただしげに近付いてきた。
 奥殿の前で止まる。
 大勢の神官を引き連れた 大副だ。
 奥殿の惨状を見て、 一声叫んだ。
「こ、 これは、 何が!」

 見張りが ボコボコにされて倒れているとの報告を受け、 様子を見に来たのだった。
 近づくなと言われていたが、 ただ事ではない。
 放っておくことはできなかった。

「陛下、 大神官様。 ご無事でございますか」
 すぐに気を取り直し、
 他に不審者が隠れていないか調べるように、 と神官たちに命じた。
 何人かを残して、 大半がドタバタと散っていく。

「申しわけございません。 まさか このような事が起ころうとは。
 警備をもっと厳重にしておくべきでした」
 大副は 平身低頭した。

 くどいくらいに謝った後、 ふと顔を上げた。
「はて、 なぜおまえたちがここに居る。
 秘儀が終わるまで おとなしく待つように言ったではないか。
 何をやってるのだ。
 見習いになりたての者が 奥殿まで入るなど、 あってはならぬことだ。
 許し難い」
「だって、 さあ」
「黙らっしゃい! 
 無作法な態度も治ってないのに、 陛下や大神官様の御前に出るなど、 もってのほか」
 四郎五郎の弁明を、 ぴしゃりと押さえて、 くどくど説教をする。
 見張りの神官たちをボコボコニした張本人とは、 気が付いていない。
 止めなければ、 延々と続けそうな勢いだ。

 たまりかねて、 帝が声を掛けた。
「この二人が、 不逞の輩から 余を守ったのだ」
 大副は しばしキョトンとしたものの、
 直接 帝から声を掛けられたのだと気付いて、 恐縮した。

 平べったくなった大副に 声が掛かった。
「そうですよ。 そこいらに転がっている不逞の輩どもを さっさと片付けて、
 治安省に届けてくださいな」
 その頃になって ノコノコ出てきた斎布の、 呑気そうな様子に、
 大副は やっと大きく息を吐いた。
 まるで、 散らかった部屋を片付けましょう、 と言われたみたいで、 落ち着きを取り戻せた。
 そうだ。 お片付けは 大副の得意とするところだ。
 長年、 大神殿を清潔に取り仕切ってきた 実績も経験もある。
 残りの神官が、 大副の合図で、 転がっている男たちを引きずり出して行った。

 奥殿に居るのは、 大副の他には、
 帝と二人の童子、 ほやほやの見習い…… はて、 大神官は?  と見回せば、
 祭壇の陰から、 黒く焼け焦げた 太くて短い丸太を取り出したところだった。
 意富美は 丸太を祭壇に立てた。

 いつの間にか注目を集めていることを知り、
 意富美は 丸太のてっぺんに貼ってあるお札に 手を掛ける。
「大祓の時に、 巨大な妖魔と集まった邪気を 残らず封じてあります。
 陛下、 私も御供しましょう。
 あの世から、 陛下の居ない天州晴がどうなるか、 ご一緒に見物するのも一興」

 言って、 お札を 一気に引きはがした。

 帝は、 悲痛な表情で 目を閉じた。

 四郎五郎と閼伽丸は、 それぞれ 退魔の剣を抜き放ちつつ走り寄った。
 間に合う 間に合わないは、 関係ない。
 よりによって、 民の信頼を集める大神殿で、 巨大な邪気を解放するわけにはいかない。

「爺さん、 やめろーっ!」
 志信が 叫んだ。



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