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天州晴神霊記 第九章――8


 と、 その時、
 開くはずのない扉が 開いた。

 火照(ほでり)の剣(つるぎ)を振り下ろした 閼伽丸が、
 ゆっくりと開いてゆく扉から 姿を現した。

「ばかな!」
 驚愕する意富美の前に、
 閼伽丸の後ろから、 四郎五郎と 斎布と 志信が現れた。

 四郎五郎と閼伽丸は、
 すかさず帝を背に庇い、 男たちに立ち塞がった。

 斎布と志信は、 奥殿を、 もの珍しそうに奥へと進んだ。
「間にあったなあ。 良かった。 斎土様に叱られなくて済む」

 予想もしていなかった闖入者に、 意富美が歯ぎしりした。
「何故、 私の結界が!」
 憤怒の形相になった意富美に、 四郎五郎が親切にも答えてやる。

「火照りの剣は、 最強の退魔の剣だ。
 人の掛けた呪など、 ものともせずに破る、
 おそらくは 唯一の剣だ」

 人並みに恐れるという知恵さえ無くした 荒くれ者の男たちは、
 なおも当初の目的を果たそうと、 帝を目指して 斬り込もうと構えを見せる。
 斑は違った。
 冷静に、 勝ち負けをはかりにかけていた。
 勝ち目は薄くなった と判断していた。
 いざとなったら 逃げるしかないが、 逃げるにしても 手ぶらはご免だ。
 大神官が、 祭壇の後ろに大事そうに隠していた物に 気付いていた。
 貴重なものなら 金になるだろう。
 行きがけの駄賃に、 それをかっさらおうと考えた。

 祭壇の前には、 珍しそうに祭壇を眺めている 童子が居る。
 帝も、 大神官も、 切り合いになりそうな気配さえも 気にする様子がない。
 邪魔くさいが、 あっちなら簡単に片付けられそうだ。

「あぶない!」
 志信が叫んだ。

 斎布は、 とっさに 祭壇にあった瓶子で 攻撃を受け止めたが、
 力任せの斑の一撃は、 瓶子を割り、 入っていた水が飛び散る。
 斎布は 瓶子の欠片を投げつけ、 其の隙に 祭壇の陰に逃げた。

 後ろから 志信が斑をはがいじめにする。
 斑は 振りほどこうと暴れる。
 今日の斑は一味違う。
 切羽詰まっていた。
 簡単には諦めない。
 小柄な志信では、 押さえておけそうにない。
 今にも振り飛ばしてしまいそうだ。



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