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天州晴神霊記 第九章――6


「や、 やっちまって、 よ、 よござんすか」

 奥殿の中では、
 男の一人が ずいと前に出たのを、 意富美が制した。
「あわてるな、 斑。 扉は開かぬ。
 大神殿の秘儀だ。 手早く終わらせては、 有難味に欠ける。
 陛下にお尋ねする。
 奇御岳と鬼道門の縁談を、 陛下が取り持ったという話は真ですか」

 帝は、 にこりと笑った。
「その通りだ。 犬猿の両家が仲良しになれば、 都の不安も消える。
 妙案だろ」
「まったく、 余計な事ばかりなさる。
 両家が交われば、 天州晴が呪われるというではありませんか。
 だからこそ 長い年月にわたって不仲を通した と聞いています。
 何が妙案ですか」

 帝は、 目を白黒させた。
「なんだ、 そのでたらめは」

「とある見習い神官が、 真っ蒼な顔をし、 声を震わせて訴えてきたのです。
 両家の当主から 直接聞いたのだと。
 私に 縁談を止めて欲しいと、 泣きながら……、
 相当に思い悩んだ末のことでしょう」

「うむむう、 とんだ見当違いだ。
 あれは 先祖の痴話喧嘩が事の起こりだ。
 仲良くなっても、 呪われたりしないぞ。
 内裏では みんな知っている。 余が しゃべっちゃったからな」

「なんと……」
 しゃべってしまうと 我が身も呪われる。
 見習い神官は、 呪いを解いてくれとすがりついた。
 『どんな呪いかが分からなければ 解くことは出来ぬ。
 しばし待て』 と言えば、 度々催促に来た。
 どんな呪いか、 さっぱり解らなかった。
 解らなかったはずだ。 呪われてなんかいなかったのだ。
 意富美が絶句した。

 見習い神官は、 意富美に付きまとったあげく、
 隠し持っていた光石を 見つけてしまった。

 狂っていく阿古屋から 注意をそらそうとして したことだったが、
 それを見つけてしまうとは、 とことん間の悪い男だった。

 あんなものを 見つけさえしなければ……。



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