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天州晴神霊記 第九章――4


「阿古屋のことは不憫に思う。 しかし、仇打ちとはやりすぎだ。
 余にも思いがけぬ展開だったのだ」
 帝は『おっさん』発言を、 聞かなかったことにしてやったようだ。
 娘を失った男への気配りだ。
 だが、 意富美は、 さらに表情を険しくしただけだった。

 取り憑かれたようなかすれた声で、 話すことを止めない。

「それだけが理由ではありません。
 陛下のような ちゃらんぽらんな方が、 この国の頂に座しておられることに、
 あの時、 無性に腹が立ったのです。

 幸いにして、 朝廷の官吏は有能だ。
 左大臣も右大臣も それぞれに癖が強く、 欠点もあるが、
 両翼が補い合って、 おおむね良いところに収まる。
 法を作るも改めるも、 政治の采配も、 彼らに任せておいて充分だ。
 むしろ 陛下の存在が 邪魔なのではないか、
 という思いが湧きあがって、 胸の内を離れんのです。
 陛下の腰巾着である鹿杖でさえ、
 あなたよりもはるかに上手く 国を治めるのではないのかと。

 あなたがいなくても、 天州晴は、 何も困らないのではないかと。
 それを確かめたくなったのです。 もうすぐ、 それが分かる」


 ガン と扉に何かがぶつかる音が響いた。

「供の童子が心配している。
 扉を蹴破ってでも入って来よう」
「ふっ、 お気になさいますな。
 扉には、 呪が掛けてございます。
 私が解かねば 開くことはできません。
 陛下は、 秘儀に失敗なさって、 命を落とされます。
 この私が、 秘儀を受け継ぎ、 命懸けで成し遂げます。
 天州晴から悪気は去り、 平穏を取り戻しましょうぞ。
 ついでに、 全ての皇子と皇女も 消えて頂いた方が分かりやすそうだ」

 うるさく鳴り響いていた扉をたたく音が、
 諦めたように ぴたりと止んだ。


     *       *       *


 締め出された二人の『童子』は、
 無理やり後を追おうとして、 神官たちに抑えられた。

「おい、 お傍から離れるな といわれているのだ。 通せ」
「これ、 騒ぐな。
 秘儀の間には 誰も入れるなと、 大神官様のご命令だ」

「うるさい。 陛下は 寂しがり屋さんなのだ。
 一人ぼっちにしたら 泣いちゃうぞ」
「おいおい、 いくらなんでも、 それは無いだろう。
 いいから、 静かにしなさい。
 扉には、 結界の呪が掛けられている。
 どっちみち、 大神官様が呪を解かない限り、 開かない」

 『童子』と神官たちが もめている隙に、
 もう一人の『童子』が 扉に手を当て、
「本当だわ。 呪が掛かっている」
 しかめっ面で呟いた。

「おまえ、 判るのか。って、 女の子かよ」
「こら、 霧呼様に向かって、 おまえって言うな」
「困ったわね。
 その人の言うとおり、 強力な呪は、 掛けた術者にしか破れないわ」

「二人がかりなら、 破れないか」
 神官を振り払って、 『童子』が勢いよく駆け寄った。
「ものは試しよね。 志信、 やってみようか」

「試すなーっ!  試さなくていい」
 神官たちが、 慌てて 二人を押さえこもうと飛びかかった。



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コメント
1446: by lime on 2013/07/06 at 08:15:33 (コメント編集)

ふたりの童子、あの二人でしたか。
よかった。・・・いや、まだ安心できないか。

1447:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/07/06 at 09:55:45 (コメント編集)

そうですね。安心するには、ちと早い。
一応主役ですから、ここらで出てきてもらわねば。
またもや、主役の座が危うくなります。
がんばってもらいましょう。

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