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天州晴神霊記 第九章――2


 大神殿は 緊張に包まれていた。
 ごくひそやかに進んできた行列の到着を待って、 大門の扉が開かれる。
 石垣に隔絶された場所は、 都の喧騒を知らぬげに、 静寂が支配していた。

 輿から降り立った帝を 大神官が出迎えた。
「準備は整いました。 ご案内いたします」
 ぞろぞろと後に続こうとしたお供の者たちを、 大神官が制した。

「大切な秘儀です。
 関係のない者どもが大勢いては、 気が乱れて邪魔になります。
 ここから先は、 どうぞ 陛下お一人で」
「そうか。 しかし困った。
 余が一人ぼっちに慣れておらぬ。 ドキドキして落ち着かない。
 側仕えの童子くらいは良かろう。 負けてくれ。 なっ」
 帝は 童子姿の二人を手招きした。
 大神官は、 一瞬眉をひそめたが、 諦めたかのように頷いた。

 二人の神官を引き連れた大神官に導かれて、 帝とその他二名が 神殿に入った。
 建物自体は勇壮だが、 内部は簡素で 清潔に保たれている。
 いかにも 神域の真っただ中 という雰囲気に満ちていた。
 やがて、 扉が現れた。
 腕っぷしの強そうな神官が数人、 通常よりも太い鋼の錫杖を携えて護っている。
 扉をくぐれば、 すかさず堅く閉じられた。

 大神官と二人の神官、
 帝と二人の童子の ひそやかな足音以外は、 音のない静謐な空間をさらに進んだ。
 再び扉が現れた。

「秘儀を執り行う奥殿にございます。 どうぞ、 お入りください」
 神官たちが扉を開き、 大神官、意富美(おおび)が 帝を招き入れた。
 すぐさま後に続こうとした童子たちを、 神官たちが押しとどめ、
 其の隙に、 童子たちの抗議も空しく 扉は素早く閉じられた。

 奥殿の広さは 極光殿の四分の一にも満たないが、 天井は高い吹き抜けになっており、
 はるか頭上に開いた窓から入る光が、 ぼんやりと室内の様子を浮かび上がらせていた。

 白い修業着を身に付けた 五人の男が居た。
 最奥には、 祭壇らしきものがあり、 二本の瓶子と 一振りの剣が供えてある。
「秘儀に剣を使うのか。 どんな秘儀だ」
「破魔の剣にございます」
 帝は 不審な表情を見せた。
「大神殿に破魔の剣があるとは 知らなかったなあ」

 意富美は 薄い笑いを返す。
「本日ただ一度だけ、 破魔の役目を果たしましょう。
 陛下の胸を刺し貫くことによって」

 修行着姿の五人の男たちが緊張し、 空気がひんやりと沈んだ。



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