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天州晴神霊記 第八章――5


 写録は 大神殿の杜を歩いていた。
 現場検証と、 発見者の聞き取りの為である。
 ふかふか座布団探偵のする事ではない。

 何故 こんなことになったのか と、 内心 忸怩(じくじ)たるものがある。
 これでは、 草履を履きつぶしてなんぼの、 そこいらの探偵と変わりがないではないか。
 しかし、 今回ばかりは 事件の周辺が広すぎて、
 座っているだけでは らちが明かない。
 出不精なはずが、 どうも 近頃は出歩くことが多くなった。
 居候をこき使ってやろうとしたのに、
 何をやっているのか、 どこかに出かけてしまって、 飯時にしか帰ってこない。
 さっさと早く片付けて、 家でゴロゴロしたい。

 不満を抱えて出歩いても 良いことがない。
 案の定、 行く手に、 神官ともめている様子の 怪しい生き物が居る。
 避けて通りたいが、 そこが写録の目的地だ。
 首括りの松の前だ。
 どこかに行って欲しい。

「ねえ、 いいかげん観念して、 あちきの助手になりなよ」
「いやだって言ってるじゃないですか。
 せっかく神官になれたのに、
 何が悲しくて 管虫先生の助手なんかにならなきゃいけないんですか。
 勘弁してください」

「ええーっ、 神官て 大変そうじゃない。
 ほら、 ここで首括っちゃったのがいるでしょ。
 辛いんじゃないの?  あちきは大事にするよ。
 助手が嫌なら、 共同研究者ということにしても良いよ」

「いいえ、 そこじゃないですから。
 それより、 何故 先生が知っているのですか。
 見習いとはいえ、 神官が 自ら首を括るなど 前代未聞。
 内密にしてもらうよう、 警邏隊には 話を付けてあるのに」

「だってほら、
 爽やかな朝の散歩になるはずが、
 うっかり死体を発見したシゲ爺が、 吃驚仰天して ひっくり返った時に、 腰をやっちゃってさ。
 今、 あちきが治療中なんだ」

 不運だと思ったら、 幸運だったらしい。
 写録は、 手間が省けたことを喜んだ。

「爺さんにも 口止めしたはずなんですけどねえ」
「あちき以外には しゃべってないと思うよ。
 でも、 ほら、 あの人は聞いちゃったかな」



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