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天州晴神霊記 第八章――3


 大内裏の楼門の前で、 写録は 大きく深呼吸を繰り返した。

 突然呼び出されて、 こうしてやって来たものの、 身に覚えがない。
 吉と出るか、 凶と出るか、 材料が無さ過ぎて、 得意の推理もままならない。
 先が全く読めないのは、 どうにも不安だが、
 お上に逆うほどの度胸なんか、 ノミのクソほども無い。
 諦めて、 震えそうになる足を踏みだした。

 吃驚仰天した。
 極光殿が壊れたらしい という話は聞いていた。
 大内裏で何かあったらしい とも耳にした。
 しかし これほどまでに酷いことになっているとは 思っていなかったのだ。
 何日か前から、 表門は どこもしっかりと閉じられ、 外からは見えないようになっていた。
 中央付近の瓦礫の山の他にも、 壊れかけている建物がいくつかある。
 何が起こったのか、 おおいに気になるところだが、
 名探偵といえども、 一般庶民。
 いつまでも眺めているわけにもいかない。

 気を取り直して、 門番に教えられた通りに進むと、
 堂々とした威厳のある建物に行きついた。
 大神殿にお株を奪われて久しく、 活躍しているという話も聞こえてこない。
 建物に行きついてはみたものの、 斎土府は しんとして ひと気も感じられなかった。

 思い切って声をかけてみるも、 返事が無い。
 知らず、 どんどん大声になっていく。
 ふと、 我に返った。
 帰ろう。
 きっと何かの間違いだ。

 くるりと向き直った途端、 呼び止められた。
「待たせたね。
 何も言わずに帰るなんて、 近頃冷たいよ。 このー薄情者」
 やっぱり間違いだ。
 いきなり薄情者呼ばわりするような知り合いが、 こんな所に居るはずが無い。
 人違いだろう。
 写録は、 振り向いて 顔を見せた。

「はい、 上がって。 斎土様がお待ちである」
 テレテレした態度で テレテレした格好の、 見知らぬ若い男が促す。
 若いというのに、 覇気というものが全く見当たらない。

「写録と申します」
 名前を名乗ってみた。
「うん、 そうだと思った」
 写録は 鯰ひげを一撫でして、 観念した。
 もう、 何が起こっても、 驚いてなんかやらない。

 ずいぶんと奥まったところに案内され、
 入口に平伏して名のったが、 返事が無い。
「あのーう、 お呼びにあずかりましたのは どういうことか、
 お伺いしてもよろしゅうございましょうか」
 写録は耐えきれず、 口を開いた。

「うむう、 見栄えがパッとせぬな。 仕方が無い、 まけておこう」
 上座から聞こえる声には、 何があっても逆らわない事に決めている写録だ。
 答えが来るのを待った。

「名探偵に依頼することは決まっている。
 事件を解き明かせ。
 青梅、 事の次第を説明してやるがよい」

 一番上座に居る女人、 斎土府の長、 一夜姫は、
 案内してくれた若い男に命じた。



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