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天州晴神霊記 第八章――2


 大内裏に近い住民が、 燃え上がる怪しい炎を目撃していた。
 真夜中の ただならぬ騒ぎにも気付いていた。
 あとは、 お察しのとおりである。

 それまでは、 単なる噂だと冷静に静観していた人間までが、 浮き足だった。
 「なんとなく不安」から 「身に迫る恐怖」へとなだれ込んだ。
 魔除けの札が大量購入された。

 そんな折に、
 長年、 犬猿の仲として有名だった 奇御岳家と鬼道門家の間に、
 しごく平和に 縁談が持ち上がっている という話が、 朝廷の確かな筋から漏れ聞こえた。
 両家の領地、 真赤土(まわに)と 水輪繋(みなわつぐ)を隔ててきた妹背川に、
 橋を架ける というおまけ付きである。
 騒ぎを鎮めようとしての計らいだったが、 もはや 焼け石に水だった。
 そもそもの原因など、 大内裏の半壊騒動の前には、 どうでもいいことに扱われた。
 都を出ても意味は無い と知っただけだった。
 星都の魔除けが崩壊すれば、 遠からず 国じゅうが魔に侵される。


 そんなある日のことである。
 帝のもとに、 十三彦が 息せき切って駆けつけてきた。

「ふうむ、 さては 二五ノ目辻のが出てきたか」
 帝はいつもと変わりなく、 問いかけた。
 四条大路の光石は、 阿古屋の骸とともに戻って来たが、
 二五ノ目辻の光石は 消えたまま、 見つかっていない。

「はいーっ、 やっと出てきました。
 大神殿の杜の松の木でぇ、 見習い神官が首を括りましたぁ。
 その松の根元に、
 『この度の事は、 私の不手際でございます。 お詫び申し上げます』
 と書かれた紙の上に 置いてございました」

 さすがに、 帝の眉間に筋が立った。
「『不手際』か。 気に入らないな」
「死んだ見習い神官は、
 大神殿からの使いとして、 度々宮中に来ていた者だとか。
 近頃、 なにやら 様子がおかしかったようですぅ」

 帝は少しく目を細め、 しばし黙考して呟いた。
「気に入らぬ」
「もっと調べを進めましょうか? 
 ああ、 でも、 警邏隊は堅物ばかりで、 光石がらみの事には 向いていないかもう。
 相談してみます」

「誰に?」
「斎土様に」
「だいじょぶか?」
「はいーっ。 ………………………… たぶん」



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