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天州晴神霊記 第七章 恋すてふ


 身の毛もよだつ化け物によって 極光殿が 跡形もないまでに壊された夏、
 帝に恋した乙女、 阿古屋(あこや)が その命を閉じましてございます。

 瓦礫にうずくまり、 胸に 黒い匣(はこ)を抱きしめて 事切れておりました。

 斎土府に内侍として上がって、 いくらもたたない内のことでございました。
 匣の中には 盗まれた光石が入っておりました。
 九―九八七番灯篭は、 巽町にある実家の屋敷から一番近い 大路灯篭だったとか。
 東雲町に被害が出たというのに、 四条大路を挟んだ巽町に 何事も起きなかったのは、
 屋敷に住む祖父母を守る為に 自ら結界を張っていたからでございました。

 阿古屋は 幼い頃から異能を発揮し、
 占いがよく当たると評判になっておりました。
 左大臣様に言い含められ、 火伏せ神事に召し出された時、
 一目で帝に恋焦がれ、 当然、 妃になれるものだと胸が騒いだものの、
 妃に選ばれたのは 違う乙女でございました。
 しかしながら、 すでに 諦められないところまで恋い焦がれていた阿古屋は、
 お妃候補を貶(おとし)めようと、 とんでもない噂を流したのでございました。
 星都の各所から 同時多発的に発生したことから、 協力した者が居るものと推測されましたが、
 それが誰なのかは ついに不明のままに終わりました。
 心もとない事でございます。

 阿古屋の画策も空しく、 珠由良の前は 無事入内なされましたが、
 もとより 諦めることなど到底ができなかったのでございます。
 世情を乱そうと、 光石をただの石ころに取り替えたのは その時のことにございます。
 浅はかにも 異能が求められる事態になるはずだ と考えたのでございましょう。
 正式な妃にならなくてもいい。
 傍に居て、 お顔を見て、 お声が聞ければ それだけでもと思いつめ、
 目を付けたのは 斎土府唯一の官吏、 山委曲(やまつばら)青梅様でございました。

 それなりの官位を持ちながら、 供も連れずに洛中をふらつく官吏は 他には居られません。
 四条大路近くを通った青梅様に近づいて、 それとなく 女官になりたいと持ちかけました。
 落ちぶれ果てたとはいえ、 由緒ある旧家の姫でございます。
 うまくいったかに思えた事でございましょう。
 しかしながら……。

 内裏に 女官は大勢居りますが、
 斎土府の長に 皇女が就かれた時のみ、 特別に 大内裏に女官が配されます。
 まさか そんな確率の低い部署に配属されるとは、 考えてもいなかった事と思われます。

 用事がなければ 内裏に行くのも難しい。
 手の届きそうな場所にいらっしゃるというのに、 愛しい帝に会うことは叶いません。
 溢れ出す想いは、 苦しくなるばかりでございましたでしょう。
 その苦しみを光石に閉じ込め、
 その苦しみが 化け物を育てることになりました。

 儚く光る石は、 悲しい恋の 依代(よりしろ)にされたのでございました。


 もう一つ、 書き留めておかねばならぬことがございます。
 極光殿に 化け物が現れた時、
 三日月の影から 白銀に輝く霧の馬に乗って、 現れ出た 美しき乙女がおりました。
 あれこそは、 天州晴の危機を救うと伝えられる 霧呼姫でございましょう。

 その活躍については、 詳しく語らない方が良いと思われます。
 伝説の乙女が実在したことを 記すのみと致しましょう。




(独白)だって、 巨大妖魔にとどめを刺したのが、 そうめん流し用の水だったなんて、
    誰も 信じないですう。
    もっと 分かりやすく活躍してくれると、 書きようもあるのですが……。
    ふうっ。


             第八章につづく



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コメント
1400: by キョウ頭 on 2013/06/20 at 22:46:33

せっかく私の好きな一夜姫が活躍したというのに…。
その活躍は、歴史の闇に葬られるのですね(号泣w)

1401:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2013/06/20 at 23:11:05 (コメント編集)

すいません。
でも、一夜姫は、歴史なんていう辛気臭いものに興味はないと思います。
巨大化すればOK。
そういう人ですから、泣かないでください。

1402:あ、もう… by 大海彩洋 on 2013/06/21 at 02:02:34 (コメント編集)

第8章に突入ですね。
色々気になっているのだけれど、どこへどう絡まって収束していくのやら……
個人的には、このしのぶ節が読めたら、何でもいいのだけれど(^^)
この章ではやっぱり『命のさんたく問題』がヒットでした。しのぶさんの言葉の魔力が白熱した闘いの中でさらにスパークしそうな第8章、楽しみです。
個人的にはあずきちゃんの飄々感が好き(^^)

1403:Re: あ、もう… by しのぶもじずり on 2013/06/21 at 12:33:15 (コメント編集)

そうなんですよ~。収束しなきゃなんですよ~。
第八章ですからね。

生きるべきか、死すべきか。も一つは な~に?
もうね、ハムレットもびっくりな三択問題。
さすがです。一夜姫は動じません。

斎布は天州晴を救えるのか。乞うご期待!
とか言っちゃっておきます。
女は度胸!

1406: by lime on 2013/06/21 at 21:10:42 (コメント編集)

この大騒動も、恋に胸焦がす乙女のしわざ・・・と、言ってしまっていいのですよね。
同情していいのか、人騒がせなと、言っていいのか。
でも、騒ぎは大きいほど、迫力があります。化け物も、大きかったし。
斎布が、かっこよく伝説に残ったのが、なんだか嬉しいですね。

第8章ですね。斎布の恋の行方など、見えてくるのでしょうか。
ちょっと気になります^^

1409:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/06/21 at 23:16:08 (コメント編集)

ここから物語をまとめていかなくては。
謎解き(?)とか、最後一波乱、二波乱?
あと一章では終わりませんのよ。
前の三作よりちょっと長めです。
上手く終わるかどうか、見届けてやってくださいませ。

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