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天州晴神霊記 第七章――16


 一方、 二五ノ目辻では、 浄め石に異変が起こっていた。

 青梅が蹴りだした守り袋が張り付いたところから、
 禍々しい気配が溢れ出ていた。

「何だ。 これは! 
 魔寄せの香が 結界を破るなんて 聞いたことがないぞ」
 四朗五郎が、 いち早く気づいた。
「私もです。
 もしかしたら、 あれやこれやの 不運な偶然が重なっての 複合作用とか……」
 閼伽丸が首をひねったが、 そんな場合ではない。

「……ああ!  去年の大祓の時、
 この辺りで よぼよぼ神官が息切れを起こし、
 休憩を取ったら 居眠りしてしまったような記憶が……。
 寝ぼけた結界になっていたのかもー。
 うわあああ」
 青梅が、 後悔の悲鳴を上げた。

 白い浄め石の表面に、 真っ黒い染みが どんどん広がっていた。
「あああああ、 破れます」
 半年分の邪気が 妖魔になって 飛び出した。
 あまりの勢いと多さに驚いた一同は、 とっさに逃げ惑った。

「きゃああああああ」
「しまった。
 せっかくあずきちゃんが作ってくれた神霊水からも逃げてしまって、
 どうしましょう。 届きません」
「気持ち悪いから、 あっちに行け!」
「あちきは美味しくないから。 駄目よ。
 駄目駄目。 いや~ん」
「いっぺんに来るな!  順番に並べ」
 四朗五郎までが 無茶なことを叫ぶ。

「おーのーれー」
 閼伽丸に 悩んでいる暇はなかった。
 あずきに迫った妖魔を斬り捨て、
「目障りな妖魔ども。 好き勝手は許さん」
 腰を抜かした雅彦君を、 防火用水樽に放り投げ、
「黄泉に帰れ!」
 管虫を 不本意ながら救った。
 うっかり間違えそうになったことは、 秘密だ。

「凄いな。 窮地に颯爽と現れる正義の味方みたいだ。
 カッコイイよ」
 一人平気そうにしているずぶ濡れ青梅が 拍手するのを無視して、
 火照りの剣を振るう。
 大きな体からは想像もつかない素早さで、 片っぱしから 妖魔を消していった。
 余計な事を考えないほうが 上手くいく。

 雅彦君は、 どこから持ち出したのか、 手桶で景気よく水を撒き散らし、
 あずきは、 新たな防火用水を見つける度に 駆け寄っては
 「真似っこ 真似っこ  チチンプイプイ」をやり、
 青梅は 管虫に追いかけられて、 ずぶ濡れのまま はた迷惑に走り回っている。

 見るからに怪しい一団だが、 相手が妖魔なら、 もはや最強だ。



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