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天州晴神霊記 第七章――12

 いつもは 東宮殿に近い暁明門から入れてもらう手はずになっていたが、
 障害物を避けて進む一夜姫を追う内に、 内裏の正門、 健令門の近くに出てしまった。

「真夜中にならないと、 出てこないと思うぞ」
「では、 あれは何じゃ」
 健令門のすぐ南、 大内裏の奥中央に建つ極光殿の陰から、
 見慣れた青白い蝶が一匹、 姿を現していた。
 志信もすぐに気がついた。
「あれっ、 なんか、 いつもと感じが違うな」
 もはや 蝶に似せる気さえないのか、
 広げた羽をまっすぐに開いて、 静かに滑空している。

 健令門に近づくや、 羽ばたきもせず 滑らかに上昇したが、
 ぴたりと中空に静止した。

 門の屋根に 光るものが現れていた。
「狐だ。 尻尾がたくさんありすぎだろう。 何本有るんだ」
 数えなくとも尻尾は九本。
 云わずと知れた九尾の狐である。
 光に見えたのは、 ほっそりと優美な狐の姿そのもの。
 蝶の行く手を阻み、 内裏を守って睥睨(へいげい)する

「完璧だわ。 なんて格好良いのかしら」
「なかなかに派手派手しくて良い」
 三者三様の感想も知らぬげに、 しばしの睨み合いがあったかと思うと、
 動かぬ一匹の蝶のもとに、 次々と青白い蝶が集まってきた。
 一匹一匹の緩やかな羽ばたきが、 せわしなく瞬く大群になって 狐を取り巻く。
 おびただしい数の蝶が、 金色の獣を覆い尽くしていき、 たちまち見えなくなってゆく。

「助けに行ってくる」
 どうやって屋根まで上るつもりだったのか、
 駆け出そうとした志信の目の前で、 光が突如 弾けた。
 蝶が 八方に吹き飛ぶ。

『内裏は護ろう。 あれを何とかいたせ』

 頭の中に直接響くような声がする。
 九尾の狐だ と何故か判った。

 極光殿から、 湧き上がるように大量の蝶が次々と現れていた。
「何じゃあれは。 極光殿で芋虫でも飼っておるのか」
 一夜姫が あきれた声をあげた。

 と、 その時、
「盗まれた光石が、 あそこにございますう」
 不意に 後ろからかけられた甲高い声に、 三人は飛び上がった。
 振り向けば、 テルテル坊主に似た小男が、 ちんまりと立っている。



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