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天州晴神霊記 第七章――9


 残った六人が夜空を見上げているうちにも、
 妖魔は一匹、 二匹 と集まって来ていた。

「こりゃいかんな。 せっせと片付けないと 洛中に溢れ出す」
 孤軍奮戦し始めた四朗五郎を見やって、 管虫が感心したように言う。
「邪気祓いのできる人って、 斎土府と神官以外にも居るもんなんだねえ。
 しかし、 患者を斬るわけにいかないしなあ。
 あの人は 治療には役に立たないなあ」

「邪気祓いに関しては、 斎土府は当てにしないでくださいね」
「えっ、 青梅ちゃんはできないの?」
「できませんよ。 あんな怪しい術なんか」
「なあんだ。 てっきりできると思って 追いかけまわしちゃった。
 好みだったし」
「……んぐっ、 こ…の…… んぐるぅぐ、 うへっ」

 医術だけでは手に負えない患者が増えて、
 試しに邪気祓いをしてみようと思い立ったらしい。
 人体実験でも 痴漢でもなかった。

「ひええ、 あっちに行け!」
 青梅が情けない声を上げる。
 管虫ではない。
 近くを通りかかった一匹の妖魔が、 匂い袋ではなく 青梅に向かった。
 ずっと持ち歩いていた為、 移り香が残っているのだろう。

 離れた場所で活躍中の四朗五郎は 間に合いそうにない。
 ずんずんと迫り、 青梅の視界いっぱいが妖魔で塞がれる。
 愛しいものに口づけするかのように顔を寄せた妖魔が、
 ギリギリのところで 消えた。

「あ~よかった。 青梅ちゃん無事? 
 あちきが付いているからね。 しっかりして。
 名人君ありがとう。 何したの?  その水はなあに」
 管虫は 雅彦君が握りしめた竹筒に手を伸ばすが、 邪険に振り払われた。

「神霊水です。 邪気を滅します。
 輪様に神気を封入してもらいました」
「わあ、 便利な物を持ってるんじゃない。 頂戴」
「何を言ってるんですか。 いざという時に必要です。
 あげられる訳がないじゃないですか」

「名人。 ほら、 水なら たくさん有るよ。
 これに封入しちゃえば…… あっ」
 あずきが、 手近に並ぶ防火用水の蓋を開け、 嬉しそうに言いかけて止まった。
「…… 封入も出来ないんだ」

「出来ませんが、 何か」
 雅彦君が開き直ったが、 動揺を隠せない隙をついて、
 あずきが竹筒をひったくった。
 慌てる雅彦君を尻目にして、 掌の窪みに、 少しの神霊水を垂らす。
「真似っこ真似っこ  チチンプイプイ  おんなじになあれ。 エイッ」
 その手を水に突っ込むや否や、 通りすがりの不運な妖魔に 勢いよく掛ければ、
 ああら不思議。 パッと消える。

「あずきちゃん、 封入出来るのですか」
「出来ないよ。
 あたしが出来るのは、 真似っこ。
 見本があれば、 真似が出来るだけだよ」
 言いながら、 もう一つ在った樽にも チチンプイプイをやり、
 青梅に 景気よくぶっかけた。

「これで 匂いも消えるんじゃないのかなあ。
 襲われないよ」
「管虫先生にも、 効きませんかねえ」
 びしょ濡れにされた青梅が、 元気を取り戻した。



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