RSS

天州晴神霊記 第七章――6


 雅彦君が難しい顔になった。
 普通、 匂い袋は魔除けの為に持ち歩く。
 良い匂いは 精神を落ち着かせ、 邪気を寄せ付けないものなのだ。
 逆に、 嫌な臭いが邪気を招き寄せることもある。

「不思議な香りだが、 嫌な臭いではなかった。
 間違えちゃったのだろうか」
 首をかしげた青梅に、 雅彦君は きっぱりと首を横に振る。
 めったに使われることがない物だが、 作るのは非常に難しい。
 うっかり調香を間違えて出来ちゃいました ということは決して無い。
 作れる人間も限られる。

「ネバネバの小父さん。 小父さんが作ったの?」
 あずきが非難の目を向ける。
「だから、 違うってばあ。
 あちきは 匂いに気が付いて 助けようとしたんだよ。
 怪しくない怪しくない。 ベロベロバー」

「にしても、 よく あの匂いが魔寄せの香だと分かりましたね」
 雅彦君も、 明らかに疑いのまなざしだ。
「大神殿の祓い会で 同じ匂いを嗅いだんだもん。
 あちきは鼻が利くの」
 星都の有力者たちの何人かが、 本人や 家族や 知り合いの命を救われていたりする。
 名医は 顔が利くのだ。
 実のところ、 彼らをそそのかして、
「祓い会を企んだのは、 あ・ち・き」 だったりもする。

「では、 いったい誰にもらったんですか」
 雅彦君は 青梅に矛先を変えた。
「う…うう
 ……あっ、 また妖魔が来た。 これでは 斎土府に連絡することもできない」
 青梅は かろうじて本来の役目にすがりつこうとするが、
 すでに 使い物になる状態にはない。
 口で説明する手間を省き、 実力行使の手段に出た管虫のせいだ。

 ブッカッコー。

「誰が不格好ですか。 ミミズクなんかに指摘されたくありません」
 青梅、 錯乱気味である。
「ええーっ。 エダマメの鳴き声は、 ブッポッポーだよ」
 と不満げに あずき。
「あちきには、 ウッコックー と聞こえるけどなあ」
 どうでもいい論争である。

「名人。 水鏡を使って 輪様か兄貴に知らせたらどう。
 ほら、 今度は あっちからもぞろぞろと来たみたいだし、
 光石はないし、大変なことになりそう。 応援を読んだ方がいいよ」
 あずきが、 良い事を思いついちゃった というように提案した。



戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
1364:鳴き声! by 大海彩洋 on 2013/06/07 at 06:39:56 (コメント編集)

やっぱりエダマメ、いい味出すなぁと思ったら、鳴き声論争ですね。国によって猫や犬の鳴き声表現も違いますものね。これって不思議ですよね。で、そう言われたらそうも聞こえるのが不思議。
そもそも動物の鳴き声を人間の言葉で書き換えることが無理なわけなんでしょうけれど。
大筋はきっと大変なのに、細かいポイントでやっぱり楽しませてくださいますね。
個人的には匂い袋に群がる妖魔、映像で見たいです。

1365:Re: 鳴き声! by しのぶもじずり on 2013/06/07 at 12:06:35 (コメント編集)

ラジオで聞いたコノハズクの声が、
どうしても   ブッ ポー ソー  には聞こえなかったのですよ。

今考えると、
夜の森で聞く声と、
真昼間に、日常のざわめきの中で聞くラジオの音では、
違って聞こえても当たり前なのかなああと思います。

夜の森で、フクロウやミミズクの声を、静かに聞いてみたいものです。

そっか、妖魔の映像的表現ができていませんでしたね。
考えてみます。
ありがとうございました。

1367: by lime on 2013/06/07 at 21:14:00 (コメント編集)

ふくろうは、「五郎助奉公(ごろすけほうこう)」って鳴くって言いますが、ミミズクはブッポウソウ(仏法僧)・・・なのですか?
ミミズクは、さすがに声を聞いたことがありません。聞いてみたいです。

ちなみにホウジロの「一筆啓上つかまつり候」は、ナイスだと思います。
なんとなく、そう聞こえます^^

1368:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/06/07 at 22:00:56 (コメント編集)

ミミズクの仲間のコノハズクが一般に ブッポーソーと啼くといわれています。
「仏法僧」という有難い漢字をあてるみたいです。
鳥の鳴き声を言葉に置き換えて楽しむって、洒落てますね。
「五郎助奉公」も「一筆啓上仕り候」も面白いです。
調べたら他にもありそうな気がします。

▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア