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天州晴神霊記 第七章――5


 路の真ん中では、
 断末魔まであと三歩 みたいな 情けなくも必死な、か細い悲鳴をひーひー上げて 逃げ惑う青梅を、
 情け容赦なく追い詰める 管虫が居る。
 魔封じの光線が途切れた夜の目辻だということを、 完全に忘れているに違いない。

 斎布が、二四ノ目辻に通じる方角から 不穏な気配を感じて、 様子をうかがおうと移動しかかった時、
 何処から現れたのか 一匹の妖魔が、
 変態風にくんずほぐれつしている二人めがけて 飛びかかろうとするのに気づいた。
 霧呼紐をいっぱいに繰り出して 打つ。
 かろうじて間に合った。
 伸ばした紐を手繰り寄せ、 せめて 隠れてやって欲しい と斎布は思った。

 ふと、 後ろに気配を感じて 横に飛びのくと、
 案の定、 小さくて動きも緩慢な奴だが、 さらに一匹、
 斎布には目もくれずに 青梅と管虫を目指している。
 おかしい。

 長く生き延び、 甲羅を経たたちの悪い妖魔が、
 特定の獲物に執着することがあるのは 知っている。
 しかし、 今夜出てきているのは 見た目も気配も そうではない。
 経験の少ない 生まれたての妖魔ばかりだ。
 路で怪しいすったもんだを繰り広げている二人に迫ろうとしている奴もそうだ。
 それなのに何故、
 斎布を無視して あっちに行くのかが不思議だ。

 ついに、 管虫が青梅をねじ伏せ、 ガッシとばかりに懐に手を突っ込んだ。
「あへ~」
 と悲鳴を上げる青梅の懐から、
 管虫が無理やり 何かを取り出して投げ捨てる。
 目辻の真中まで飛んだものは、 あでやかな刺繍に彩られた匂い袋だ。
 妖魔は進路を変えた。
 明らかに投げ捨てられた匂い袋に向かっていく。

「やっぱり。 あちきはそうじゃないかと睨んでました」
「もしかして、 魔寄せの…… そんな……」
 精根尽き果てた青梅が、 組伏せられたまま 呆然と呟く。

 しばらくの間 黙って見ていると、
 妖魔は匂い袋にすり寄り、 うれしそうにじゃれつき始めた。
 まるで マタタビを手に入れた猫さながらである。
 斎布が 一撃で成敗する。

「だから 青梅ちゃんは、 あちきの言うことを聞いていれば良いんですよ」
 体力と精神力を使い果たした青梅を 軽々と立たせて、
 抱えこむように管虫は歩き出す。
 見た目からは想像できないが、 相当に力がある。
 雅彦君たちが隠れている所へと連れて行った。

「大丈夫…… じゃなさそうですね。
 何故あんなものを持っていたんですか。 危ないなあ」
 雅彦君が手を貸して 落ち着かせる。
「もらった」
 かろうじて 青梅が、 気の抜けた返事を返した。



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