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天州晴神霊記 第七章――4


「き、き、き、消えてます。 光石が一つ 消えてます」

 雅彦君が 蒼い顔で報告した。
 どさくさまぎれに うっかりしていた。
 本来の任務を忘れてしまうところだった残りの五人が 一斉に緊張し、
 余分な一人、 管虫を見た。

「犯人はおまえか!」
 そろって指をさす。

「違うってば。 みんな落ち着こうよ。
 あちきは 青梅ちゃんが心配で 探していただけなんだってば。
 良かった」
 管虫が言いながら、 青梅の懐に おもむろに手を突っ込もうとする。
 青梅が 小さい悲鳴を上げて 振り払う。
 管虫が 帯に手をかけて引く。
 青梅が 必死にその手を外そうとして 身をよじる。
「逃げちゃ駄目だってばあ。 うふん。 あちきに任せなさい」
「いやだ」

「何をやっていらっしゃるんでしょうか。
 大変なんでございますよ。 解ってますか」
 斎布が ブチ切れた。
 言葉遣いが 異様に丁寧だ。
 声が怖い。 顔も。

 斎布を見て、 今度は 雅彦君が悲鳴を上げた。
「そんなに私の顔が 怖いですか」
「違います。 後ろ。 …… 出た」

 振り返れば、 ぞろりと妖魔が這い出していた。
 雅彦君があずきの手を引いて 防火用水を溜めた樽が並ぶ陰に逃げ、
 斎布が紐を振り、
 四朗五郎が剣を抜き、 閼伽丸が警戒し、
 管虫が 青梅を押し倒す。

 斎布が呼ぶ霧のせいか、 妖魔の気配のせいなのか、
 夜気が ひんやりと震えた。

「雅彦君は 一緒にやっつけないの?」
「残念ながら、 邪気祓いも 妖魔退治も 業務範囲外です」
 あずきに聞かれた雅彦君は ドきっぱりと宣言して、 怯むところは無い。
「要するに、 …… できないんだ」
 ブッカッコー、
 おとなしくしていたエダマメが、 一声鳴いて 羽をばたつかせる。

「ねえ、 あっちから来るの。 あれなあに」
 あずきが指さした方角に 目を転じれば、
 五条大路を 都の中心部に向かって 闇の塊が蠢いていた。

「妖魔です。
 今夜はよく出ますね。 霧呼様、 新手が来ます」

 斎布が走る。
 水気を吸って 十分に重くなった紐を 鞭のように飛ばし、 妖魔を打ち砕いた。
 だが、 どうもすっきりしない。
 まだ 嫌な気配を感じるのだ。



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