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赤瑪瑙奇譚 第三章――6



「祝砲の 二発目を撃った者は 居らぬのだ」

 驚くユキアを見据えて、 ホヒコデは 冷静に続けた。
「喜びのあまりとはいえ、 死人が出た騒ぎになったのでな、
 責任を明らかにせよ と命じたが、 ついに 判らなかった。
 祝い事でもあるし、 重い罪は問わぬ、 その罰も 余の初孫誕生の祝いに 恩赦にする、 とまで言ったのだが、
 隠したわけでも、 ごまかしたわけでもないらしい」

 二台目の砲台を指揮した男が、 数日前に 男子をもうけたばかり だったこともあって 疑われたが、
 慎重な男で、 姫という知らせが入った時、 念のために 砲手を二歩下がらせた。
 大砲に手の届く位置に居た者は 無かったというのに、 二発目の祝砲は 鳴り響いたのだ。

 ただ、 砲台に お守りが落ちていた。
 指揮官が わが子のために買ったもので、 小さな柘榴石(ざくろいし)が 飾られていた。
 柘榴石は 「力と勝利」 を意味する。
 父親から 子への 祈りが込められていた。

 他には何一つ、 誰一人 無かったのだ。

「ユキア、 おまえの運命じゃ。 人々から注目され、 騒がれる運命なのじゃ」
 運命はともかく、 セセナが 泣いて嫌がっているなら、 しょうがないか という気になっていた。

 上に生まれた子は、 こう言われて育つ。
『お姉さんなのだから、 妹や弟には 優しくしなさい』
『お姉さんなのだから、 我慢できるでしょ』
 カムライが 夫としてどうなのかは 経験が無いから分からないが、 少なくともいやな奴ではない。
 但(ただ)し、 思いっきり 目立たなくてはならないのだ。
 運命とやらは、 人の努力を 一瞬で無駄にするものらしいことに、 ちょっと腹が立つ。


 三国同盟結成一周年の祝賀記念式典が、 各国それぞれにおいて 大々的に行われることになった。
 マホロバからも 王の名代として、 マサゴには赴任中のタヅムラが、 モクドにはユゲ大納言が、
 そしてコクウには、ユキア姫が 列席することに決まった。

 それを聞いた女官たちは、 「引きこもり姫」 をどうやって 王の名代らしくしようと、 騒然となったが、
 王も 両親である皇太子と妃も 慌てる様子が無い。

「案ずることは無い。 我が城には セセナがいる」
 王の言葉が、 皆を落ち着かせた。


 母のテフリから、 一つだけ忠告があった。
「ユキアは まだ若いのに、 声が低い。
 えーと、 なんというのだったかしら。新入りの侍女に 聞いたのだけれど……。
 そうそう、 ドスが利いている、 というのですって。
 だから、 ほんの少しだけ 声の音色を高くしてみては。 その方が 華やかな感じになるわ」

 衣装選びと 発声練習が 始まった。



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by まとめwoネタ速neo on 2012/05/20 at 03:10:15

「祝砲の 二発目を撃った者は 居らぬのだ」 驚くユキアを見据えて、 ホヒコデは 冷静に続けた。「喜びのあまりとはいえ、 死人が出た騒ぎになったのでな、   責任を明らかにせよ ...

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