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天州晴神霊記 第六章――9


 そんなある日、
 暇そうな家人にねだって、 大神殿を見物に出かけたあずきが 日暮れに帰ると、
 すぐに 斎布の部屋にやって来た。

「姫様、 ただいま。
 都って 変わったものばかりあって 面白いですね」
「何を見つけたのかしら」
 あずきは早速、 懐から 書付のようなものを取り出して見せた。
 斎布が受け取って 開いてみれば、
 『日暮れに、 ここで待つ  四郎五郎』 と豪快な字で書いてあるのみ。

「なあにこれ」
 斎布は 眉をひそめた。
「何処にあったと思いますか」
 聞かれたところで 分かるわけがない。

「大神殿の見物に行きました。
 エダマメが目を覚ましていたので 一緒に連れて行ったのだけど、
 境内の大きな木の 高い枝まで飛んじゃって」
 エダマメを目で追いかけた先に、 それは見えた。

 最初に目に入った時は、 枝に白い花が咲いているのかと思ったが、
 よく見ると 紙がいくつも枝に結んであると分かった。
 その一つを 何が気に入らなかったものやら、
 エダマメが突いて落とした物が それだという。

「境内の木の枝…… 何だっけ。
 何かあったような………… あっ」
 思い出してしまった。
 必死に忘れようとした努力も空しく、 恥ずかしい出来事を思い出してしまった。

「あれって、 おまじないか何かかなあ」
「うううう…… 欅の木よね」
「たぶん欅かな。
 やっぱり知っているんですね。
 他にもいくつか在って 目についたから、 あたし以外にも 気づいた人が居たけど、
 何なのかは 知らないみたい」

 秘密の連絡のはずなのに、 気づかれるほどたくさんって 冗談じゃない。
 一体何を考えているのだ と思ったら、
 斎布は すっくと立ち上がり、 駆け出していた。

「姫様、 何処へ?」
 あずきの質問に答えている暇はない。
 一刻も早く回収しなくては、
 何が書いてあるのか判ったものではない。

 夜が始まりかけた境内で、 山猿も真っ青な勢いで木を登る乙女が一人。
 見る者が居なかったのは 幸いである。


           第七章につづく



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コメント
1353:わぁ~~ by 大海彩洋 on 2013/06/01 at 08:11:12 (コメント編集)

何なの、なんなの。
この果たし状のような恋文(だよな、うん、こうねるとね)は^m^!
ちょっと興奮してしまいました(*^_^*)
エダマメ、Good Job! です…って、エダマメがつつかなくてもいずれいっぱい落ちてくるよね。
この恥ずかしげも何もないのが四郎五郎っぽい~
しょうもないことでコメントしてすみません。
結構ツボに来たものですから…

1354:Re: 大海彩洋様 by しのぶもじずり on 2013/06/01 at 17:11:33 (コメント編集)

ほんとにもう、果たし状ですよね。
結局会えてないし。

なんか考えてない奴ばっかになっています。
エダマメも、登場させたからには何かやらせないとね。
次章は派手になります。

みんなでドタバタがんばります。ご期待下さい。

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