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天州晴神霊記 第六章――8


 二人が話している間にも、
 怪しい蝶は次から次へと数が増えて 珠由良殿に押し寄せて行く。
 はじめに現れた一匹が、 珠由良殿にいよいよ迫ったが、
 手前で進めなくなったのか 後退る。
 他も後を追うが、 やはり取り囲むばかりで それ以上は近づこうとしない。

「おい、 放っておいて大丈夫なのか」
「う~ん、 誰が操っているのか調べるには どうすればいいのかしら。
 けっこう難問ねえ」
 怪しい蝶は 途切れることなく湧き出して、
 もはや 珠由良殿を覆い尽くさんばかりに取り巻いている。
 青白い光が 建物をぼんやりと照らしだすまでになっていた。

「お妃さまに何かあったらどうするんだ」
「待ちなさい。
 珠由良様が 呼び寄せているのかもしれないじゃないの」
「それは無い。
 お妃さまが呼ぶなら、 狸か狐か千年妖怪か、 もしくは白塗りのお天気お姉さんのはずだ。
 蝶々は守備範囲外のはずだ」
 根拠のない自信で 堂々輪と渡り合う志信だったが、
 いっこうに動こうとしない輪に腹を立て、 剣を抜いて 乱舞する青白い集団に突っ込んだ。
 手当たり次第に 斬り散らす。

「あ~あ、 台無し。 駄目だこりゃ」
 ため息をつく輪を無視して、 志信は斬って斬って斬りまくった。
 三分の一ほどを蹴散らした頃、 不意に全部が消えた。

「何か解ったか」
「解るわけないじゃないの。 この考え無しの唐変朴が! 
 全部消しちゃってから 何ほざいているのよ。 もう。
 じっくりと観察する暇もなかったじゃないの。
 明日の晩は 私の指示に従いなさいよ。 勝手に暴れるのは無しだからね」

 しかし、 翌日は現れなかった。
 否、 一匹だけ 前の晩と同じように現れたそれは、
 観察と称して しつこく付きまとう志信に 怖気をなしたものか、 あっさりと消えた。
 続けて張り込んだものの、 一匹だけ現われては すぐに消えるようになった。
 真夜中の内裏で、 輪と志信が罵り合いながら 不毛な鬼ごっこをしている間に、
 またもや怪しい噂話が ひたひたと蔓延し始めた。

 曰く、 内裏で怪異が起こっている。
 曰く、 四人目のお妃さまがお住まいになっている御殿から 夜な夜な不気味な光が出て 内裏中を飛び回り、
 みんな寝不足で 帝までがげっそりと痩せこけてしまった。
 もはや朝廷が機能していない。
 天州晴が危ない。

 内裏に働く官吏や女官たちは、 噂を気にした知り合いに聞かれても、
 はじめのうちこそ 笑って否定していたのだが、
 あまりに方々からしつこく尋ねられるうちに、本当にげっそりしてしまった。

 そして、 誰も彼もが思い出してしまったのだ。
 光石盗難事件が 全然解決してはいなかった事を……。



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