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天州晴神霊記 第六章――5

「あずき。 おまえ一人か。 他のみんなは?」
「エダマメが一緒だよ。
 あとのみんなは 出てこようとした時に 親たちに見つかって、 連れ戻された」
 ミミズクのエダマメは、 きょろきょろとあたりを見回している。
 とまり心地のよさそうな庭木を物色していたのかもしれないが、
 そのまま あずきの肩を動こうとはしなかった。

「シロもか」
「蘇平(そへい)と一緒に連れ戻された。
 蘇平が命令すれば、 シロだけでも来れたはずなんだけど、
 あいつ 機転が利かないから」
 志信は まいったなあというように 頭に手をやる。
「正体不明の同士を入れても 全部で五人と一羽かあ。
 あずきは よく出て来れたなあ」

「朝廷をひっくり返すことに比べれば、
 親を言いくるめるのなんか、 とっても簡単だよ」
 実は、 あずきは十三歳である。
 両親も 弟や妹たちも 全部小柄な一家だが、
 とりわけ あずきは小さくて、 しかも幼く見える。
 知らない人間からは 七歳以上に見られたことが無い。
 当人も その点を十分に理解していて、 時に利用しては 大人を煙に巻くのが得意だ。
 親たちでさえ、 見た目と中身の落差に混乱している節があった。
 最後には言いなりになる。

「作戦が変わったっぽいんだ。
 人数が減ったのは痛手だが、 俺が居るから何とかなるだろ。
 それはともかく、 一人で無事に来れて良かった。
 途中、 大丈夫だったか」
「裏道を通って来た。
 美少女が表街道を一人で歩いていたら 危ないに決まってるもの。
 都に入った途端、 悪そうな男に目をつけられたけど、 案外馬鹿な男で助かった。
 今頃 その辺であたしを探して 迷子になってるんじゃないのかなあ」
 北を尋ねたら 南を指さした。
 長い影を見れば 東西南北など一目瞭然だ。
 男の魂胆も見え見えだった。

「都って、 警備が厳重なんだね。 警邏の人たちがいっぱい巡回していた」
「光石が盗まれたりして 色々あったんだ。 そのせいだろ」
「ねえ、 兄貴の水鏡は雑音が多いし、
 途中で途切れたりして 蘇平も詳しいことが分んなかったんだって。
 どうなってんの」
「さあ、 俺もよく知らない」
「相変わらず大雑把なんだね」
 あずきも慣れているのか、 今更驚いたりしない。
 星都で起こったことを 『色々』の一言で片づけてしまう技を持っている。

「あずき、 腕っぷしはどうだったっけ」
「そこは見た目どおりよ。 小さいし、 からっきし駄目」
「だよなあ。 邪気祓いは出来たっけ」
「あれ、 兄貴は知らなかった?  できないよ」
「水鏡の術は?」
「やったこと無いけど」
「ふううん。 そうなんだ」
 志信の反応は それだけだった。

 朝廷をひっくり返すつもりの、
 もとい、 天州晴に平穏をもたらす大事業の 新たな助っ人は、 こんなあずきがたった一人。
 それと 肩におとなしく止まって、 目をパチクリしているエダマメが一羽だけだった。
 ちなみに エダマメは、 ただ飛べるだけである。
 特に芸は無い。



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