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天州晴神霊記 第六章――3


 輪のところに 宗靭が押し掛けた。
「洛中では 妖魔や邪気が激減したというのは 本当でございますか」
 宗靭が渋面で問いかければ、
 のんきに日向ぼっこを楽しんでいた輪が 即座に応じた。
「本当だってば。 私がズルをして怠けてるとか思っているわけ? 
 大神殿が派手なことしてから、 どんどん邪気が減ったわよ。
 ああいう風に目立つやり方が使えると 楽よね。 勝手に邪気が減るもの。
 うちもやろうかしら」

「やめてください。
 鬼道門は 長い間そういうことはやっていません。
 いきなり派手な事をしたら 世間の皆さんが腰を抜かします。
 鬼道門には鬼道門のやり方というものがありますから、 そっちで頑張ってお願いします」
 宗靭の眉間にできた縦皺を眺めていた輪が、 しばしの沈黙の後、 眼を鋭く光らせた。
「内裏で何が起こったのかしら」
「良い勘をしていらっしゃる」
「話の流れからすると、 そういうことよね。 簡単じゃないの」

 星都の邪気が減ったのは 間違いない。
 新しい人気者、 名探偵にして勇者、 写緑の噂は 久しぶりに明るい話題を振りまいていた。
 謎の男ということにもなっている。
 春風一座が 『名探偵写緑捕り物帳』を準備しているとか、
 春風桜乱が 男役で主役を演じるとか、
 絵草紙屋が 似顔絵を売り出すとか、
 親衛隊ができたとか、
 手下の少年探偵団が美少年揃いだとか等等、 大賑わいを呈していた。
 暗い雰囲気と邪気が吹っ飛んだ。
 それなのに、 今更 鬼道門の仕事を頑張れという。

 宗靭が 膝を進めて声をひそめた。
「夜な夜な 青白く光る蝶が出るそうでございます」
「夜に出るのなら 蝶じゃなくて蛾じゃないの。
 ほら、 オオミズアオとかいう水色の蛾がいたじゃない。
 あたし 虫は苦手だから、 誰か他の人に駆除してもらって」
 輪は ひらひらと手を振って 嫌そうに顔をしかめた。

「害虫駆除なら 輪様にわざわざ話が来ません。
 宿直の女官がそれを見た時、 はじめは たまゆらかと思ったそうです。
 何処からともなく現われて、 珠由良殿の周りを光りながら漂っていたとか」

 その昔、
 庭に幾度か たまゆらが出没した所から 珠由良殿と呼ばれるようになった と伝えられている。
 良いことが起こる前触れ ―― 吉兆と考えられているが、 必ずしもそうとは限らない。
 霊気の塊のようなものだ。
 中には たちの良くないものもあるのだ。



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