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天州晴神霊記 第六章 珠由良殿――1


 都には 人も物も天州晴中から 次々とやってくる。
 いちいち大げさに驚かないのが 粋な都人というものだ。
 しかし、 その子は 確かに都人の目を引いた。

 着ている物は古くはないが、 明らかに粗末で あか抜けない代物だった。
 一目で 田舎から出てきたばかりと知れる。
 まだ母親の膝が恋しい年ごろにしか見えない。
 日が傾きかけた都大路にぽつんと立って、 物珍しげに 辺りを見回している。

 何処を歩いてきたものか、 埃を被っている上に ぼさぼさ頭には 葉っぱまでくっ付けている。
 だがよく見ると、 都でさえ めったにお目にかからないほど きれいな顔をした女の子だった。
 その子の肩に止まって 一段と目を引いているのは、
 大人の手ほどの大きさの 小さなミミズクだ。
 尖った羽角を立てて パチリと目を開けば、 虹彩が鮮やかな黄色だった。
 小さなどよめきが通り過ぎる。

 大内裏を廻る堀を横に見て、 三条大路を南に向かう男が居た。
 こざっぱりとした商人風の身なりをしているが、
 肩を斜めに揺らす だらしない歩き方は 堅気には見えない。
 剣呑な視線が 女の子に止まる。
 ゴロツキらしくない格好だが、 男は町の嫌われ者、 斑だ。

 斑も 木ミミズクを見たのは初めてだったが、
 そうと分かったのは 絵で見たことがあるからだ。
 深い森の奥に生息すると聞いた気がする。
 他の都人も 似たようなものだろう。

 見たところ、 女の子に連れはいない。
 まだ幼い女の子がたった一人というのは、 いかにも物騒だ。
 まともな親がいれば、 こんな無茶をさせるとは思えなかった。

 斑は貧相な顎に手を当て、 にたりと笑った。
 簡単で 金になりそうな獲物だ。
 できれば さっさと物陰に連れ込んで かっ攫いたいところだが、 そうもいかない。
 光石盗難事件が明らかになってからこっち、 洛中警邏隊が警戒を強めた。
 いたるところに警邏士がうろちょろしていて、 はなはだやりにくい。

 大神殿の祓い会が一時評判になって、 いくらか落ち着きを見せ始めていたが、
 警戒を緩めるつもりはないらしい。

 祓い会の翌日から、 大神殿はさすがに頼りになる と大層な評判だったが、
 覆いかぶさるように 一人の男が噂に上り、 大神殿の業績が、 少しばかり かすんでしまった。
 夜の都大路に徒手空拳で出かけ、
 光石が無事に光っているのを自分の目で確かめた 命知らずの男。
 しかも それが祓い会の前の晩、 妖魔が頻繁に出没していた時だったというから、
 皆 感動するやら 驚くやら。
 さすがに 名探偵と称するだけのことはある、 と今や大人気である。

 男の名は 写緑。
 評判の割には 実物を知る人間は意外に少ない。
 斑も どんな男か知らなかった。
 そんなこともあって、 慎重に事を運ぶことにする。

「お嬢ちゃん、 一人かい」



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