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天州晴神霊記 第五章――10


「霧呼様、 霧は?」
「無理!」
 その間にも すっかり形を取り戻し、 二匹に増えた妖魔が
 牙をむいて それぞれに襲いかかった。

 突然 どこからともなく、 二つの影が躍り出た。
 長身で しなやかな影は、 左腕一本で斎布を引っさらい、
 右手の剣で 妖魔を斬ってすてた。
 一匹は消えた。

 志信に襲いかかった妖魔には 大きな影が剣を繰り出したが、
 動きを一瞬止めただけに終わる。
 だが、 その一瞬で十分だった。
 志信は 腰に結わえていた紐を切り、 竹筒を妖魔に投げつけた。
 当たったと同時に 一緒になぎ払う。
 割れた竹筒から水がほとばしり、 妖魔を消した。

「またあんたたちか。 ちょいちょい出てくるなあ」
 志信が呆れたように言った。
 昨夜会ったばかりの二人だ。

「名探偵の勘が当たった。
 下手な推理より分かりやすくて良い」
 斎布を抱えたまま、 四郎五郎が答えた。

 今夜のお祓いのことを言った途端、
 斎布が目を輝かせたことに 写緑は気づいていた。
 『大神殿に行くかもしれない。 ただの勘だ。
 しつこく聞くから言ったけど、 論理的根拠は何もない。
 外れても 文句は受け付けないぞ』
 渋る写緑を、 言わないと置いていくぞと脅して 聞き出したのだった。
 名探偵は脅しに弱かった。

「あっちは大丈夫なのか。 ずいぶんでかいな」
 霧は役に立たない。
 手近に水はもう無い。
 当てにできるのは 四郎五郎の白鷹丸だけだ。
 神官たちの手に負えるのだろうか。 広場の反対側を四人は見つめた。

 巨大妖魔は、 いよいよ拝殿の間近に迫っていた。
 そこだけ 篝火の炎が弱いのは、
 神官が恐れをなして 木片を継ぎ足せなかったのだろうか。
 炎の輪の中には 他にも邪気の切れっぱしが蠢いていたが、 外に出ようとする気配は無い。
 さっきの妖魔だけが 特別無謀にできていたらしい。
 どの世界にも 向こう見ずな奴は居るとみえる。

 半端な邪気も 拝殿の近くに向って集まってゆく。
 巨大妖魔が それらを吸い取って、 さらに膨れ上がった。
 またもや悲鳴が上がる。

 その時、 大神官が進み出た。
 覆いかぶさるかのような巨大妖魔の正面に立ち、
 真っ白い矢を弓につがえ、 そびえ立つ妖魔の頭頂めがけて引き絞る。



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