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天州晴神霊記 第五章――8


 やがて、 あたりは どっぷりと闇に包まれ、
 都が寝静まった頃になって やっと新たな動きが起こった。

 拝殿の中には わずかな明かりがあるものの、
 拝殿前の灯篭が消され、 張り詰めたような闇と静寂の中、 本殿の扉が開く。

 松明を掲げた一団が現れた。
 前後を松明に守られるように、
 三宝を持った神官と 正装で固めた白髪の大神官が ゆうるりと進み始め、
 二条大路に向った。

 彼らの姿が遠ざかると、 篝火に火が放たれ、 赤々とした輪が広場を照らしだす。
 輪の外側には 何箇所か木切れが積まれているが、 よく見ると 一つ一つに呪が書かれている。
 それを 神官たちが篝火に継ぎ足してゆき、 炎が 次第にしっかりとしたものになってゆく。
 しばらくの後、
 今度は 途中の地面に突き立てられた松明に 火をつけながら、
 二条大路の方から 先ほどの一団が近付いてきた。
 呪文を詠唱する低い声が流れる。
 二条大路から炎の道が繋がってゆく。

「俺たちのやり方って、 こうやって比べてみると 地味じゃないか」
「私は 手軽な感じで好きだけど」
「確かに 準備が大変そうだな。
 でも 依頼人たちは感動するかも。 偉そうな白髪頭は誰だ」
「あの正装は たぶん大神官ね。 それに、 誰が見ても分かる風格があるわ」

 戻ってきた三宝には 薄く光る光石が乗っていた。
 大路から離れた為、 他の石とは もはや光が繋がっていない状態だ。
 それを 拝殿に備えるように置き、 全員が輪の外に待機した。

 やがて、 途切れることのない詠唱の声に引き寄せられるように 闇が流れ込んできた。
 拝殿の中から 押し殺したうめき声めいたものが漏れる。
 見物している依頼主たちが おびえる声だろう。
 炎の輪の中で 闇が渦を巻き、
 あたかも頭をもたげるかのように 形をなしてゆく光景は、
 まぎれもなく 異様なものだった。

 神官たちは 用意した木片を 次々と篝火に投げ入れてゆく。
 負けじとばかりに炎が大きくなり、 あたりは恐ろしいまでの熱気に包まれた。

「邪気の勢いが強いわ。 どんどん流れ込んで大きくなっている。
 大丈夫なのかしら」
 光石盗難事件が発覚してから、 星都の治安が一気に乱れた。
 小競り合いや 喧嘩が 格段に増えた。
 注意力が散漫になっているせいか、 小さなボヤも含めて 火事も多い。
 些細な事にも敏感に反応する人間が出て、
 見つかったコソ泥が 近所の住人たちに袋叩きにあったりしていた。

 戦争ならば 遠くに逃げればいい。
 だが、 妖魔は逃げる方法がない。
 魔封じの星都が力を失えば、 魔は 天州晴全土に蔓延(はびこ)る。
 何処に逃げても 危険は変わらない。
 不安が、 新たな邪気を生み出していた。

「めちゃくちゃ熱いぞ。 神官さんたち大変だな。 ぶっ倒れないか。
 万が一に備えて、 霧を呼んでおいたほうが良くないか」
「無駄よ。 中途半端な霧では、 この熱気で すぐに消えるわ」
「じゃあ、 ドカンと呼んだら」
「火が弱まるわ。 邪魔になる」
「まだ大きくなってるぞ。 いやな予感がする」



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