RSS

天州晴神霊記 第五章――3


「『ようだ』とか 『そうだ』とか、 非論理的だろ。
 遠慮しなくて良い」
 志信に意地悪をしている意識は無い。
 スカスカ頭には、 そういう高度な機能は備わっていない。
 単純な親切心で言っているだけに 始末が悪いともいえる。

 天州晴の民は、 幼い頃から 『夜の都大路には百鬼が走る』と聞かされて育つ。
 人心が安定してさえいれば、 よほど運が悪くない限り めったに妖魔に出会うことも無いが、
 好んで夜の大路を歩く者は居ない。
 よんどころない場合でも、 魔除けの札を身に着け、 目辻を避けて横切ることがあるだけだ。
 写緑のように、 全く係わりを持たずに暮らす人間も少なくない。

「おお、 これだ。 ほら、 四―九八七。 なっ、 本物だろ」
 志信に振り回されて、 なんとか諦めの境地を探り当てようと煩悶する写緑の前に、
 光の筋を伸ばす灯篭があった。
 これで帰れると思うと なけなしの気力が抜けてゆく。

 適当に頷きながら 帰り道を探して振り向いた先に、 一番見たくないものが見えた。
 出来損ないの妖魔。
 闇にもなりきれぬ半透明の姿が、 安酒にやられた酔っぱらいのように ヨロヨロと漂って来る。
 叫びを上げようと大きく開いた口から、 声も出ないままに 写緑は固まった。

 出来損ないの妖魔は、 写緑のどこが気に入ったものやら、
 微動だにしない写緑の真正面に来ると、 嬉しそうに にまあっと笑った…… ように見えた。
 のどかな成り行きに、 あわてる気にもなれなかった志信が 、剣に手をかけた時、
 現れた白刃に 出来損ない妖魔は あえなく胡散霧消した。
 その場で腰を抜かした写緑には目もくれず、
「見つけた」
 白鷹丸の使い手は、 斎布にまっすぐな視線を当てた。

「わ、 私?」
 目を白黒させて 斎布が自分を指差す。
「うん。 探していたのだ。 あんなに素早いとは思わなかった。 油断した」
「な、 何か用かしら」
「光石を盗った盗人がまだ捕まらない。 皆不安になっている。 けしからん。
 だから この手で捕まえることにした。
 手がかりを探している。 はじめに見つけたのはそなただ。 経緯を尋ねたい」

「あなたも 名探偵だったりするわけ?」
「腹が立っているだけだ。 理不尽な不安を解消しなくては、 こっちが困る。
 ん?  『も』って なんだ」
「そこで腰を抜かしているおっちゃんは 名探偵なんだ。
 喪流愚横丁の大量殺人事件や、
 からくり屋敷の 大量行方不明事件や、
 傾城楼の狸の置物 大量盗難事件を解決したらしい」
 志信が解説する。

 大量を付ければ良い というものでもない。
 狸の置物だらけの遊郭が繁盛するとは到底思えないが、
 斎布は気にする事無く、
 というか、 傾城楼が遊郭だとも気がつかないまま、
 かいつまんで 要望にこたえた。



戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア