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天州晴神霊記 第五章――2


「こんなところでうだうだ言ってないで、
 九―九八七番灯篭に 確かめに行けば良いじゃないか。
 簡単だろ」
 口止めされたことを覚えていたのかどうかは いまひとつ不明だが、
 志信の答えは単純明快だった。

 それを聞いた野次馬たちは、
 てんでに顔を顰めたり、 嘲笑うかのように顔をゆがめたりして反論する。
「簡単じゃないんだよ。
 光っていない時の光石は、 そこいらに転がっている石ころと区別なんか出来やしないさ」
「じゃあ、 光ってるところを確かめれば良い。
 夜になればすぐに判る。
 おっちゃんは名探偵なんだろ。 それくらいしなくちゃね。
 さあ行こう」
 志信は 写緑の腕をむんずとつかんで、 さっさと歩き出した。

「さすがは名探偵だ。 頼りになるなあ」
「お願いします。 確かめてもらえれば 安心できます」
 口々に言う野次馬たちの言葉に見送られて、
 写緑は 志信に引きずられて行く。

「いや、 我輩は論理だけを武器に推理するのが得意なのだ。
 犯行現場の実地検分なんかごめんだ。 止めろ」
 半泣きの写緑の言い分は 誰にも聞いてはもらえなかった。

「ええーっ、 探偵は草履(ぞうり)を履き潰してなんぼ じゃないのか」
「それは間違っている。
 名探偵は 歩き回ったりしない。
 ふかふかの座布団に一日中座ってだな、 灰色の脳細胞だけを働かすのだ。
 またの名を ふかふか座布団(ざぶとん)探偵とも言う。
 こら、 引っ張るんじゃない」

「細かいことは気にするな。
 もうすぐ日も暮れる。 問題の大路灯篭に着く頃には 光っているからすぐ判る。
 良かったなあ」

 写緑を引きずりながら、 元気良く進む志信の後ろを歩きながら、
 斎布も 四条大路に向かった。
 志信の考えなしの一直線は、 分かりやすくて良い、 と考えているうちに、 夕闇が降りてくる。
 途中で、 てるてる坊主男とまたもやすれ違った。

 思い出したように時折無駄な抵抗を試みる写緑を連行していたので、
 目的の場所に着いた時には、 すでに光の線が繋がっていた。
 写緑は 初めて光石が光っているところを間近に見たのか、 呆然と見入っている。

「ほらっ、 この辺りだ。 ちゃんと光ってるだろ。 安心したか」
 得意げに笑う志信に反応して、
 瞬間、 写緑は不機嫌な顔を さらにむっと顰めた。
「人を散々引きずっておきながら、 その大雑把な説明は なんなのだ。
 非論理的だ。 お前の頭はザルか」

「う~む、 確かに。
 きっちり確かめよう。 行くよ」
「うわああ!  我輩が悪かった。
 今の発言は 全面白紙撤回する。
 光が繋がっているようだ。 大丈夫そうだ。 即時撤退しよう」


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