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犬派のねこまんま その28     byねこじゃらし

<大きくならないはずのウサギは でかいウサギに育った>


 ある日のことである。 母と妹が 街に買い物に出かけた。
 洋服を買いに行ったはずだが、
 何故か、 ちっちゃなウサギ も買ってきた。
 片手に乗るほど小さい 茶色の子ウサギである。

 よく見ると、 不細工 だった。
 しかも、 汚れにしか見えない斑点まである。
 お世辞にも可愛いとは言い難い。

 しかし、 買ってきた二人は おおいに盛り上がって はしゃいでいた。
 買うに到った顛末を、 かわるがわるに縷々話す。
 繁華街の 露店 で売っていたらしい。
「大きくならないウサギ」 と大書してあったという。


 その頃、 我が家はマンション暮らしであった。
 一応、 犬猫は禁止であるが、 出歩かない小鳥などは黙認されていた。
 大きくならないウサギを 部屋の中でこじんまりと飼うならば、 問題なかろうと考えたのだ。
 二人は 自慢げに見せびらかした。

「う~む、 言いたかないが、 不細工ではなかろうか」
 吾輩は 我慢できずに指摘したのであった。
 反論されるかと思いきや、
「そうなのよ」 異句同音に返事が返った。

 はじめに買おうとしたのは、 いや 一度買ったのは、 器量良しの灰色 だったという。
 ものすごく可愛かったので、 つい買ってしまったらしい。
 そして、 帰ろうとした時に、 まずいことを思い出したのだ。
 父が、 大のネズミ嫌いであることを。
 ちゃんと見れば、 ものすごく可愛い灰色ウサギは、
 小さいこともあって、 ちらっとしか見ないと ネズミに見えてしまいかねない事を。
 父は、 絶対に大騒ぎで文句を言うに決まっている。
 二人は 慌ててUターンしたのであった。

 そこで目についたのが、 不細工な茶色 だった。
 自分たちが買わなければ、 きっと売れ残ってしまうに違いない。
 二人は確信したという。

 売れ残ったら どうなるのだろう。
 二人は、 不細工ウサギの 不幸な行く末 を、 たちどころに想像してしまい、
 その悲惨な運命に、 思わず涙しそうになったらしい。
 茶色い兎を救うことを決心したのだという。
 器量良しの灰色と交換した。


 こうして 我が家に来た不細工ウサギに、
 妹はあろうことか、 こじゃれたカタカナ名前をつけようとした。
 それでは、 完全に名前負けしてしまう。
 それを制し、 吾輩が勝手に名付けた。
「ええ~っ、 私が買ったのにい~」
 妹が抗議したが、 ペットの名前は、先に付けたもん勝ち である。
 吾輩は、 その頃には学習していた。

 耕助になった。 ちゃんと漢字だ。
 当時、 我が家では、 一家そろって横溝正史にはまっていたので、 異論は出なかった。
 名探偵金田一耕助は、 我が家では 大人気だったのである。
 よれよれ加減も ぴったりだ。

 飼うと決まれば、 とりあえず である。
 近所の空き地に 草を刈りに行った。

 ド田舎に住んでいた頃、 同級生の家でウサギを飼っていた。
 同級生が餌係だったらしく、 よく ギシギシ を摘んでいたのを思い出した。
 吾輩の頭には、 ウサギの餌といったらギシギシ、 という図式が出来ていたのだが、
 あいにく、 近所の空き地には生えていなかった。

 そこで、 ペンペン草、 ハハコグサ、 ハコベ、 コオニタビラコ、 葛、 タンポポ、
 のように 人間でも食べられる草を採取した。
 次に、 ウサギの気持ち になって、 美味しそうに思える草も採った。
 面白いことに、 そこそこ 気持ちは通じたようだった。
 食べた。
 耕助は、 かなりの量を食べた。

 ギシギシは葉が大きく、 効率よく量を確保できたが、
 ペンペン草やハコベでは、 たいした量にならない。
 けっこう頑張ったが、 大変だった。

 そこに参戦してきたのが 父である。
 吾輩も いいかげん 大雑把 にできているが、 父はその上をいく。
 何処からか草刈り鎌を持ってきて、 手当たり次第に ごっそりと刈ってきた。
 すると、 さすがは 草食動物 である。 自分で選んで食べる。
 食べられないらしい草を きれいに残す。
 それらは、 腹が減っても絶対に食べない。

 なるほど、 あの草は ウサギも食べないのか。
 食料危機になっても、 食べてしまわないように覚えておこう と思ったのだが、
 幸い、 雑草を食べる羽目にはならなかったので、 今では すっかり忘れてしまった。

 父親方式では、 耕助の好き嫌いが如実に分かる。
 イネ科の植物が 案外好きだ。
 吾輩が どんなにウサギの気持ちになっても、 イネ科の硬い草を美味しそうには思えない。
 人間の限界を感じたのであった。

 耕助は、 たくさんの草を食べに食べた。
 一番の好物は タンポポらしい。
 真っ先に食べる。 
 葉っぱはもちろんだが、 も好きだ。
 必ず、 根元のほうからくわえて、 縦に食べていく。
 最後に 黄色い花が、 鼻先に咲いたみたいになり、
 その様子が ひたすら可愛くて、 タンポポがあれば 採った。
 
 葛のつるの先っぽは、 人間も食べられるし、 美味しそうに思えるのだが、
 耕助は 硬い部分を好んで食べた。
 イネ科の草といい、 葛の葉といい、 そういう硬い葉を食べることで、
 ウサギの 立派な前歯 は保たれているのかもしれない。
 剃刀並みに 切れ味が良い。
 ちょっとしたものである。
 ちやほやされて育つ人間が 忘れてしまった 生命の知恵、 というべきものかもしれない。
 ウサギは ウサギなりに、 たくましい。

 そうこうしているうちに、
 「大きくならないウサギ」 のはずが、
 でかいウサギに育ってしまった。
 どう見ても、 ミニウサギではない。
 ただの 野ウサギ である。

 要するに、 騙されたわけである。
 草を食べすぎたせいではないと思う。




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コメント
1308: by lime on 2013/05/02 at 20:15:08 (コメント編集)

たしかに・・・。
私も、ミニウサギを買ったつもりだったのに、立派な猫ほども、おおきくなりました。
そして、2羽買ってしまったために、どんどん増えました。笑ってやってください。

あの、小さな子うさぎを見てると、なんだか大きくならないような気がするんですよね。

たんぽぽが好きなんですね。
昔、小学校で飼ってたうさぎが、わしゃわしゃ、美味しそうに草を食べていたのを思い出します。
(我が家は、安易にラビットフードでした^^;)

1309: by キョウ頭 on 2013/05/02 at 22:45:51

私が小学生の頃に、ウチで飼っていたミニウサギも、フツーにでっかく育ちましたヨ。
ひょっとして「ミニウサギ」という品種って、実は存在しないのでは?

1310:Re: lime様 by しのぶもじずり on 2013/05/02 at 23:46:14 (コメント編集)

やっぱり。
みいんな騙されたんですね。

ラビットフードだと、水も飲ませるんですってね。
草を食べさせると、水は飲ませないんですよ。
水分過多になるんでしょうね。

鼻の頭にタンポポを咲かせたウサギは、可愛いなんてもんじゃないです。
すぐに、花も食べられちゃうんですけどね。

1311:Re: キョウ頭様 by しのぶもじずり on 2013/05/02 at 23:49:47 (コメント編集)

ミニウサギにした方が売れるんでしょうね。
野ウサギでは、売れ行きが悪そうです。

いっぱい騙された人がいるんだろうな。

1312: by 困 on 2013/05/03 at 01:18:24

はじめまして。
いつもこのシリーズを読むと、フフっとなってしまい、毎度楽しみにしております。
これからも執筆活動がんばってください!

1313:Re: 困様 by しのぶもじずり on 2013/05/03 at 10:18:35 (コメント編集)

ありがとうございます。

はじめは、雑文を全部「犬派のねこまんま」にしてしまおうと思っていました。
だんだんに、ネタはあるのですが、「犬派の……」にまとめるのが難しいものが出てきてしまい、
散らかってきてしまいました。

楽しんで頂けると、励みになります。
今後も、がんばっていこうと思います。

1314: by なになに子 on 2013/05/03 at 12:32:39

家のご近所さんに うさぎを庭で飼っていらっしゃるお宅があります。
丁度1年前のことです。
いかにも通りすがりのおじ様がうさぎのところで止まり 何気にポケットからキャベツを取り出しました。
そして うさぎも何の警戒心もなくパクついていました。
この親しんだ関係今もってわかりませんが
うさぎサン抱っこするには重そうなくらい立派な体格を維持しています。






1315:Re: なになに子様 by しのぶもじずり on 2013/05/03 at 14:45:50 (コメント編集)

そういえば、キャベツも好きですよ。
人間に飼われているウサギは、人間に対する警戒心が薄いようです。
耕助も、隣のうちの人にもなついてました。

草を食べる姿は、見ているとなごみます。
他の生き物でも、そうかもしれないですね。
田舎のおばちゃんやおばあちゃんは、遊びに行くと、食べ物をたくさん出してきて、
「食べなさい、食べなさい」と、しきりに勧めたりします。
美味しそうに食べる姿を見るのは、なんであれ、楽しいのかも。

動物園にも、「エサを与えないでください」という看板があったりします。
上げたがる人が居るのでしょう。

1320: by 次席家老 on 2013/05/08 at 12:16:32 (コメント編集)

私は,10年ほど前,
通勤途中に捨てウサギと遭遇して,
ついつい仏心を出して,家に連れ帰ったんです。
タンポポが大好きでしたね~。
でも,そのうち誰も世話をしなくなって,
家族で出した結論は,
「自然に帰そう!」
さっそく,近くの裏山へ。
これって,むごい?

1321:Re: ご家老様 by しのぶもじずり on 2013/05/08 at 18:00:48 (コメント編集)

残念なことを言っちゃいますが、
人間に飼われた動物が野生に帰るのは、難しいのではないかと思います。

生き物を飼うのって、大変ですよね。

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