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天州晴神霊記 第四章――8


 昨夜の今日だ。
 まだ 丸一日も経っていない。
 都人の噂好きにも困ったものだが、
 四―九八七、 よく出来た贋物 等々、 細かいところまで 妙に具体的である。

 珠由良の前に関する噂の とんでもない怪しさに比べて、 ほとんど事実なのが かえって不思議だ。
 消えていたわけではないから、 通りすがりの人間が偶然見つけたとは考えにくい。
 重さを知っている人間も、 そうそう居るはずがない。
 斎土府唯一の文官 青梅の態度から推し量れば、 斎土府が公表したとも考えられない。
 一体 どこから漏れたのだろう。

 つい志信を見ると、 思いっきり ぶんぶんと顔を横に振っている。
「俺は 留守居役様にしか言っていないぞ。
 それくらいの分別はある」
 分別があるかどうかはともかく、 志信は こんなことで嘘はつかない。
 残る心当たりは、 あの場に居た二人の男しかない。

「そんな風には見えなかったけど、
 あの二人ってば、 おしゃべりさんだったのかしら」

 夜の星都を守るはずの光石が盗まれた という噂は、 人々を震え上がらせた。
 不安げな様子で、 こそこそと立ち話をする人たちがいる。
「魔除けのお札は持っているか」
「いんや、 厄除けしか持っていない。
 今から大神殿に貰いに行って 間に合うだろうか」
「急いだほうがいいぞ。
 ほら、 おいらはさっき頂いてきた。
 ああ~っ!  間違えた。 縁結びのお札じゃないか。
 かみさんに疑われる。 どうすりゃ良いんだよこれ。 もう一回行って 取り替えてこなくちゃ」
「無理だわ。 もうじき日が暮れるだわ。 あわわわ」
 あたふたと右往左往する人々を尻目に、 西の家並みに日が沈んでゆく。

「あのう、 斎土府が手当てしますから、 あわてなくても大丈夫ですよ」
 斎布と志信は 行く先々でそう言ってなだめたが、
 誰も斎土府を当てにしていないのか、 聞く耳を持たない。
「とことん頼りにされていないのね。 まあ、 解る気がするけど……」

 それどころか……。
「斎土府が動いたのなら、 噂は本当なのね。
 嘘――っ!  どどどどどうしよう。 殺される。 助けてーっ。 キャ――――」
 比較的落ち着いて見えた人までが 恐慌に陥ってしまう始末。
 藪をつついて 毒蛇を出してしまったようなことになり、 斎布も志信も諦めた。
 こういう混乱を予想して、 斎土府は 極秘の内に事を納めようとしたのだろうが、
 かえって裏目に出てしまった。

「こうなったら、 きちんと公表したほうが良いわね」
 なす術もなくたたずむ二人の前を、
 てるてる坊主に目鼻をつけたような、 珍妙な若い小男が通り過ぎてゆく。
 ぺたぺたとした歩き方は 到底 速そうには見えなかったが、
 その後姿は異様な速さで小さくなり、 たちまち見えなくなった。

 カァー。 夕暮れの星都に 鴉が鳴く。



               第五章につづく



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