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天州晴神霊記 第四章――6


「これから仕事に出かけるのだけれど、 歩きながらでいいかな」
 てれてれとした歩き方は 変わらない。

「あなたは何者なの。 まだ名前も聞いていなかったわ」
 ここは仕方がない。
 回りくどい聞き方は苦手だ。
 こちらの事を聞かれたら、 適当に誤魔化そう。
「名は 山委曲(やまつばら)青梅(おうめ)。
 斎土府で唯一の文官だね」

「うそーっ。 れっきとした文官が そんな格好でいいの? 
 それに、 あっちこっちふらついているように見えるけど、 文句を言われないのかしら」
「あちこち出歩いているのは、 人使いの荒い上司のお使いだよ。
 お仕事」
「うー、 でも 大内裏でその格好は無いんじゃないの。 叱られない?」
 ここを先途とばかりに、 矢継ぎ早に質問攻めだ。
 相手が問い返す隙を作りたくない。

「始めのころは 散々叱られたような気がするけど、
 そういえば 最近は何も言われないなあ」
「もしかして、 文句を言われないほど官位が高いとか…… まさかねえ」
「官位か。 どうだったかな。
 何しろ 斎土府に文官は一人しかいないから、 上がったのか下がったのか 気にしたことが無い。
 関係ないよね。 一人しかいないんだから。 つまらん」

 青梅の返事に、 納得のいかない顔をしていた志信が 口を挟んだ。
「ごろつきに若様って呼ばれていただろ。 仲間じゃなかったのか」
「これでも 名家のお坊ちゃんだからね。
 巷(ちまた)では よくそんな風に呼ばれるよ」
 それにしても、 ごろつきに顔を覚えられる程とは、
 どんだけ一夜姫のお使いは頻繁なのやら。

「斎土府のお仕事って 何をしているの? 
 神事は みんな大神殿がこなしている と聞いた覚えがあるのだけれど」
 忙しいとは思えない。
 その質問には、 歩きながらも振り向いて 少し考えた。
「んー、 星都の魔封じを維持管理することかな。
 都大路のお掃除が行き届いているかの点検とか、 浄め石の大掃除とか」

「大掃除……」
「そっ、 吸い込んだ邪気が 浄化されずに溜まっちゃったりするからね。
 年に一度、 浄め石をきれいにして 結界を張りなおすんだね」
「一年も持つんだ…… 結界。 あなたが張るの?」
 口惜しくて、 斎布の声が少し小さくなる。

「斎土府にだって、 一応 神官はいる。
 よぼよぼで 棺桶に片足を突っ込んだような爺さんだけど、 結界だけは得意なのだ」

 なるほど、 魔封じの維持管理がお仕事ということは、
 青梅が持っている小さくて重そうな荷物は、 たぶん……。
 斎布は ちらりと荷物に目をやった。

 青梅は、 つと 、足を止め、 背筋を心持のばすと、
「では、 ごきげんよう」
 あっさりと去っていった。

 青梅の手荷物は、 十中八九予備の光石だ。
 これから 四条大路に行くのだろう。
 なるほど、 きちんと調べてみるものだ。
 ちゃんと仕事をしているらしい。

 そして、 斎布は 不意に思い出した。
 斎土府の内侍に 見覚えがあった。



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