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天州晴神霊記 第三章 かくとだに


 大きな争いは、 後の世に禍根を残すものとは聞き及んでおりましたが、
 門多義家と喜谷部家の争いは 近隣の土地に迷惑をかけたばかりか、
 遠くはなれた都さえも 不安に陥れることになろうとは、
 当初は 思いもよらぬことにございました。
 しかも、 時が経つにつれ、
 収まるばかりか 大きな事件が起こるまでに至りましたのは、
 悲恋のうちに 若い命をなくした二人の嘆き故か、
 はたまた
 愚かな戦いに巻き込まれて 無念の最期を遂げた人々の怨念でございましたのでしょうか。

 早くから民の不安の大きさに気づかれた帝が、 手を打っておられたにもかかわらず、
 事件の影は 忍び寄っていたのでございます。

 季節の変わり目に 火伏せ神事がございます。
 帝が大神殿に出向かれて、 民の前にお姿をお現しになる行事にございますれば、
 その折を利用し、
 神事の後に 目出度き詔(みことのり)を発せられるおつもりを お持ちのようでございました。
 民を 元気に明るくしようとのご配慮でございました。
 それなのに すっかりご失念あそばされましたのは、
 例年にないことが起こったからにほかなりません。

 それまで、 帝のご接待とご案内の役目は 神官がしておりましたのに、
 若い女人が 勤められたのでございます。

 人が恋に落ちる瞬間を 目(ま)のあたりに致しました。

 日ならずして、 帝が四人目のお妃様をお迎えになられることが決まりました。
 何故に そこまでお急ぎになられるやら と周囲が呆気にとられるほど、
 それはもう 電光石火の早業でございました。
 日ごろは のんびりと見える帝は、
 実のところ、 ご決断なされれば 素早く動かれる方でもございました。

 不思議なのは それからの事でございます。
 いずこから漏れ出たことやら、
 ことさらに披露されたわけでもないというのに、
 準備が始まると 忽ち噂が流れたのでございます。
 しかも、 四人目のお妃様に関しての 奇妙な怪しい噂ばかりが
 恐ろしい勢いで広まったのでございました。

 あまりに奇怪な噂故か、 さすがに 帝をお諌めする方がございました。
 さる筋からも、
 お妃様選びを間違えておられるのでは というご伝言が、
 密かに届けられたということもございました。

 それでも帝は、 いささかも揺らぐことなく 事をお進めになられたのでございます。

 あわただしく 四人目のお妃様が入内なされました。
 そして……、
 星都を揺るがす 大きな事件の幕が上がったのでございました。


               第四章につづく



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