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天州晴神霊記 第三章――15


 光の線が、 途切れていた。

 ぽっかりと口を開けた闇に向かって 急ぐ。
 一つだけ 明かりの見えない灯篭にたどり着いたが、 さすがに暗い。
 かろうじて輪郭が分かるだけだ。
「志信、 明かり」
 志信は 折りたたみ式の下げ行灯を組み立て、 地面に置いて火をつけた。

 頼りない光を確認する暇も無く、 志信が斎布をつかんで大きく跳んだ。
 勢いで 着地と同時に倒れ込む。

 ぞわり。 妖魔の気配だった。

 置いてきぼりにされた 小さな行灯の明かりを掠めて、 剣呑な気配が迫る。
 獣に似た姿をした妖魔が 二人を狙っていた。
 それまでに出会った雑魚とは違う。
 これぞ本格的な妖魔だ。

 霧も水も無い。
 前夜の成功で調子に乗った二人は、 竹筒を持たずに来てしまったのだ。
 二人は 窮地に陥った。
 妖魔は それを知ってか知らずか、 余裕さえ見せて身構える。

 志信が 斎布をかばうように、 身を起こして前に出た。
「霧呼様、 逃げろ!」
「志信、 どきなさい」
 互いに 鋭い声をあげる。
「バカ言ってんじゃねえぞ」
「バカなこと言わないで」
 斎布は 間に合わないと知りつつ、 霧呼紐を手に取り、
 志信は 柄(つか)に手を掛けた。

 妖魔が襲いかかる。
 と、 そのとき、 山のように大きな影が飛び出し、 妖魔に剣を突き刺した。
 だが、 一瞬形を崩しかけた妖魔は、 ゆらりと元の姿を取り戻し、
 嘲笑うように 飛び出してきた大男を無視するや、 斎布と志信に狙いを戻した。

 とっさの出来事に、 二人は立ち上がるのがやっとだった。
 攻撃に転じる余裕は無い。
 大男の行動は、 たいした時間稼ぎにもなっていなかった。
 妖魔は ジリッと間合いを詰め、 襲い掛かる体勢をとる。
 大きく跳躍した瞬間、 煌めく白刃が 妖魔を切り払った。
 音も無く 妖魔は砕け散った。

 揺らめく明かりに残ったのは、 神域の杜で 螻蟻妖(ろうぎよう)を斬った男だった。
 置き去りにした下げ行灯が、 ふわりと持ち上がる。
「大丈夫か」

 斎布と志信は、 同時にこくんと頷いた。
 志信が近付いて 行灯を受け取る。

 小さな明かりの輪から身を隠すように、 大男 閼伽丸(あかまる)が しょんぼりとうなだれている。
 気付いた志信は、 気の毒になって声をかけた。
 妖魔の動きを一瞬しか止められなかったが、 全く役に立たなかったわけでもない。
「おい、 でかいの。 気にするな。 剣で妖魔は退治できないのが普通だ」
 しかし閼伽丸は、 ますます身をすくませる。

「何で あんたは斬れたんだ?」
 今度は不思議そうに、 連れの若者に向かって首をかしげた。



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