RSS

天州晴神霊記 第三章――14


 斎布が目を覚ましたのは、 日が傾き始めた頃だった。
 寝起きの悪さを根性で補い、
 それでも 傍目からはぼうっとしか見えない様子で、 あれやこれやと考えていたところに 志信が来た。
 宗靭が一緒だ。

「留守居役様が、 昨夜のことを知りたいそうだ」
 自分で言っておきながら、 志信は 続けて昨夜の出来事を話し出し、
 結局 全部説明した。
「……というわけさ」
「やはり 邪気でござったか」
 宗靭が渋面を作る。

 斎布は 文箱から星都の地図を取り出した。
 書庫にあったのを借り出し、 都見物の参考に眺めていたのだ。
 都を守る為に、 鬼道門家が作った詳細な地図で、 無断持ち出し禁止になっていたはずだが、
 宗靭は 特に文句は言わなかった。

「私たちがいたのは この辺よね。
 邪気が来て去ったのはこっち。 四条大路がある方角だわ。
 やっぱりよ。 光石に何かあったのだわ。 壊れたとか、 …… 盗まれたとか」
「月に一度は 洛中警邏隊が点検しているのです。
 一昨日が点検日で、 異常は発見されていません。
 東雲町の異変は、 もっと以前のものから報告があって、
 原因は光石以外だと思っていたのですが…… う~む」
 宗靭は 納得のいかない顔で考え込んだ。

「だって、 確かに邪気が溢れ出ていたわよ。
 他の原因なんてあるはずないじゃない。 ここは星都よ」
「それはそうなのですが、
 そもそも光石は、 岩にぶち当てても 岩のほうが砕けるほどに頑丈だということですが、
 単に光るだけで 他に取得はありません。
 しかも、 同じ大きさの二つ以上が共鳴しなければ 強い光にはならず、
 一つだけでは 灯油の節約にもならぬとか。
 盗んでも 独特な光のせいで、 たちまち見つかってしまいますし、
 見つかったら 盗んだ者も 買ったり貰ったりした者も 即極刑。
 盗んだところで、 割に合いませんわなあ。
 確かに 珍しい物好きという人種もいますが、
 命と安全を失ってまで 手に入れたいと思うほどの代物でもございませんでしょう。
 自慢するわけにもいかないですし」

 実際、 過去に盗まれたことが二度あったが、 いずれも三日以内に 光石も犯人も発見されている。
 盗んで成功した例はないのだ。
 それに、 星都の魔封じが消え 、魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)すれば 大変なことになる。
 すでに調伏できる術者も少なく、
 一般の民が わずかなりとも防ぐ術(すべ)も、 都では ほとんど忘れ去られて久しい。
 自慢できないわ、 国中から恨まれるわ、 自分も危なくなるわで 良い事無しなのだ。
 もちろん、 割に合わない。

「ねえ、 警邏隊が点検したということは、 昼間よね」
「はい」
「じゃあ、 光石が力を失くして、 光らなくなったのかも。 夜の点検も必要だわ」
「そんな例は 聞いたことはありませんが」
「初めてのことが起こったのかもしれないでしょ。
 志信。 今夜も行くわよ。 付いていらっしゃい」


 今のところ、 四千九百九十個の光石を 全部調べる必要は無い。
 二人は、 東雲町と巽町に挟まれた四条大路を 南に下っていった。
「怪しいのは この辺りよね」
 昨夜、 大活躍をした場所に近付いていった。
「ふううん」
 何も考えていなかったに違いない 気の無い返事が返ってきた。
 都見物をして気がついたが、 その辺りが 洛中でも一番の未開発地域だ。
 気を悪くされても困るので言い換えよう。 発展途上地域だ。
 一条大路、 二条大路、 三条大路、 五条大路は 端っこまで行っても けっこう賑やかだ。

 町明かりも届かなくなって、
 深くなった闇にくっきりと走る光の線をたどり、 二人はさらに進んだ。
 そのまま進んだら 都を出てしまうかと心配になった頃、 気になっていたものが目の先にあった。

「見つけた」
「わっ、 大変だ」



戻る★★★次へ

トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

プロフィール

しのぶもじずり

Author:しのぶもじずり
とりあえず女です。
コメントを頂けると、うれしいです。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

検索フォーム

いらっしゃ~い

らんきんぐ

よかったら押してね
 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ にほんブログ村 小説ブログへ
 

リンク

このブログをリンクに追加する   リンクフリーです

おきてがみ

FC2以外のブログからお越しの方、クリックで足跡が残せます。
「ことづて」は機能していませんので、ここにはコメントは残せません。

RSSリンクの表示

QRコード

QR

月別アーカイブ

フリーエリア