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天州晴神霊記 第三章――11

 口癖のように言っていた 「つまらん」という声が聞こえない。
 きっとつまらなくないのだろうと思うと、 全っ然 面白くなかった。
 気に入らない。

 いつの間にか、 ものすごい早足になっている。
 志信が 慌てて追いかけた。
「そんなに急がなくても 大丈夫だぞ。
 それにしても、 あの若様たち、 いい感じだったな。
 春って感じ?  今は夏だけど」
 腹立たしいのは そこだ。
 志信の指摘に、 斎布は 〈縁談中止大作戦〉を図るに到った原因を思い出した。

 華やかな都なのに、
 様々に大勢の人間がいるのに、
 みんな よろしくやっているのに、
 何故、 自分には春が来ない。
 世の中、 間違っている気がした。
 その時に ふと浮かんだのは、 何故か、 一度しか出会っていない 荒ぶる漆黒の瞳。
 不思議な気持ちがして 首をかしげたが、 よく分からない。
 おおいに怒りまくって ずんずん進み、 目的の場所に着いた。

 すっかり日は沈んでいたが、 速足で来たせいで、 床に入るには まだ早い時間だ。
 家々からは明かりが漏れて、 うなされる声も 暴れている様子も無い。
 洛中とはいえ、 ここまではずれになると 建物もまばらになり、 畑や空き地も見えた。
 歩き回ってみたが、 特に異変も邪気も無い。

「なんでもないじゃない。 でも、 すぐに帰っちゃうわけにもいかないわね。
 もう少し様子を見て、 何も起こらなかったら 帰りましょう」
 やがて 人家の明かりが消え始め、 闇が町を覆い始めた。

「なんか嫌な感じ、 寒気がする」
 志信が顔をしかめた。

 夜になっても 冷える季節ではない。 寝苦しいほど暑い日もある。
 ザワザワと押し寄せてくるものが 気に入らないのだ。
 二人は気配を探り、 休耕中の畑らしい広い空き地で 南に向きを変えた。
 ゆっくりと 何処からか あふれだすように、 不穏なものが流れてくる。

 斎布が 急いで霧を呼ぶ間も 途切れることなく、
 始まりはごく薄く、 次第に濃さを増して ゆるゆると迫ってきていた。
 明らかに邪(よこしま)な流れは、 渦を作るように集まり、
 ひときわ濃い塊をあちらこちらに生み出し始めた。
 充分な濃さを得た塊から ボコボコと妖魔に変じてゆく。

「なんなのよこれ」
「妖魔だな」
 言うが早いか、 志信は 手当たり次第に 出来立てほやほやの妖魔を、 片っ端から斬り飛ばした。
 志信も気がついた。
 斎布と一緒なら 剣に水を掛ける手間がいらない。
 霧をまといつかせ、 そこに神気を呼び下せば済む。
「ちょろい」



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