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天州晴神霊記 第三章――9


「まったく、 三人も后妃がおいでで、 ご立派な皇子様も皇女様もいらっしゃるというのに、
 まだお入れになるとは……。
 それよりも、 東宮様を何とかなさったほうが良い と皆言っています。
 お年頃だというのに、まだお一人もいらっしゃらないのですから」
 宗靭が戻ったら報せる と言いおいて、 侍女は下がった。

「丁度良うございました。
 斎土府(さいどふ)の 斎土(いつきど)様から、 当家にご依頼がございました」
 宗靭は、 すぐにやってきた。

「いつきど……さまって…… 斎土府なんてまだあったの?」
 元々 宮中の神事は 斎土府が執り行っていた。
 長(おさ)には 親王か内親王が就き、 優秀な神官を擁し、 全国の神殿や社(やしろ)を束ねていたのだが、
 いつの頃からか 大神殿に取って代わられていた。
 今ではすっかりさびれて、 年老いた神官と若い見習い神官の二人しか居らず、
 文官に至っては ほとんどが空位になっている。

「一応、 まだございます。 長の斎土様には 第一皇女の一夜(ひとよ)姫様が就いておられます。
 ご依頼の件はこれに」
「あ、 の、 う、 こんなことになってしまったけど、 心を入れ替えて、 叔母様に反省文を提出するから、
 お役御免にして欲しいの。 今なら十行くらいは書けそう。 うん」
 差し出された文を押し返し、 斎布は しどろもどろに言った。

「とにかくお読みください。 常のお役目とは別のご依頼です。
 このようなときには、 水輪繋から 誰か呼び寄せるのですが、
 幸い 今は霧呼様と志信殿がおられます。 丁度良かった」

 宗靭が強引に差し出した文を しぶしぶ開いた。
 見れば、 ミミズが七転八倒して盆踊りを踊っているような 個性的な字が書き連ねてある。
 文官がほとんどいないというから、 一夜姫の自筆かもしれない。

「これを私がやるの?」
「はい。 領主様も輪様もご了承済みです」
 近頃は 妖魔の出現が頻発していると雅彦君も言っていたし、 通常業務もおろそかに出来ない事態だ。
 仕方がない。
 そんなに手間はかからないだろう。

 聞けば 架橋工事も思わぬところで滞っているらしい。
 両家がそれぞれ手配した橋大工が、 双方 天州晴一の腕前だと言い張って譲らないという。
 両家の仲たがいとは別な路線で 揉め事が勃発した。
 この分だと いくらか余裕がありそうだ。



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