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天州晴神霊記 第三章――8


 お腹をすかせて 斎布が目覚めた時には、 陽はすでに高く上っていた。
 屋敷に帰り着いて ほっとした途端に、 用意されていた夜食も摂らずに すとんと眠ってしまったのだ。
「初のお勤めを果たされたというのに、 気が高ぶった様子も無く 熟睡なさるとは、
 さすがに 肝が据わっていらっしゃいますこと」
 朝食を下げに来た侍女が言う。
 褒めているのか 呆れているのか、 微妙な口調だ。

 輪と志信のせいで、 予定に無かったことをする羽目になってしまったが、
 こんなことを毎晩していては 身動きが取れない。
 何のために都に出てきたのか 分からなくなってしまう。
 宗靭に相談してみよう と斎布は思いついた。
 宗靭なら 輪にとりなしてくれるかもしれない。

「留守居役殿に相談があるのだけれど、 会いたいと取り次いでくれるかしら」
 架橋工事の進捗状況も 知っているかもしれないし、
 どのくらい時間があるのか、 それも確かめたい。

「宮中にお出かけですよ。
 四番目のお妃様が入内なさったお祝いを届けにいらっしゃっただけですから、
 まもなく お戻りになると思いますけど」
「ええーっ、 あの噂の……」
 斎布が驚くと、 侍女は膝を乗り出した。
「姫様も噂をご存知でしたか。
 白塗りのお天気お姉さんとか、 九尾の狐が化けた狸を操るとか、
 千年妖怪のお友達だとかいう ものすごい噂を」
 最初の一つしか知らなかった。
 九尾の狐が わざわざ狸に化けたら、 損じゃないだろうか。
 良いことなどないような気がする。

「実際はどんな方なのか、 聞いている?」
 思わず ひそひそ声になってしまう。
「さっぱり分からないのです」
 正妻のお后様ならともかく、
 四人目の妃ともなれば、 内々の杯事(さかずきごと)はするだろうが、 正式に発表されることは無く、
 大々的な祝い事にはならない。
 それでも 入内すれば、 生まれ育ちや年齢などが漏れ聞こえて、 人々の知るところとなるのが普通である。

「珠由良(たまゆら)殿にお入りになったので、 珠由良の前と呼ばれるということと、
 身分の低い出でいらっしゃるということくらいしか 分からないのです。
 お年がおいくつなのかさえ さっぱり。
 こんなことは めったの無いことなので、 噂は本当だったのかと皆不安がっております」

 状況は 悪くなっているように思える。
 それにしても、 とんでもなく怪しい女を 平然とお妃にしてしまう帝という人物が読めない。
 第一、 まだ帝に面と向かう機会さえないのだ。
 作戦その三を早急に考え出さなくてはならない。
 やっぱり、 妖魔退治なんかしている場合ではない。



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