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天州晴神霊記 第三章――6


「眠らないで下さいね」
 そう言われたのに、 二人とも爆睡してしまい、 夜中過ぎに たたき起こされた。


「ここから南の方角です。
 おそらく、 三五ノ目辻に向かってくるでしょう。 出動してください。
 まったく。 寝起きの悪さは 輪様といい勝負ですね。 起きてますかー」

「ふぁ~い」
 寝ぼけまなこで飛び出し、 人っ子一人いない町を急ぐ。

 夜の都大路は、 邪気と妖魔の通り道。
 特に 世情が不安定な時期には、
 仕方なく横切ることはあっても、 都大路に沿って通行する者はいない。
 ましてや 目辻には決して近づかない。

「どっちに行けばいいんだろ」
 考えなしに飛び出しては見たものの、 志信だって初出動だ。
 勝手が分からない。
「目辻で待っていれば、 集まってくるって言ってなかったかしら」
「そだな。 でも、 ちゃっちゃと終わらせて帰りたい気もする。
 霧を出したら、 あっちから寄ってくるんじゃないのか。
 ほら、 あいつら 湿気っぽいのが好きそうだし」
「そうかも。 やってみる」

 どうせ待っていても退屈だ。
 目辻に着くと 霧呼紐を出して、 斎布は ゆっくりと振りはじめた。
 静かな夜に 霧が立ち込めてゆく。

 半分眠っているような やる気の無い斎布と、
 欠伸(あくび)をしながら伸びをしている志信の 目の端を 怪しい影が素早く通り過ぎた。
「わっ、 出た。 待てこらー」
 志信が、 抜いた剣に、 素早く手持ちの神霊水を掛けて追いかける。
 ゴキブリみたいにすばしこい。
 蜚魔(ひま)だ。
 志信が全速力で追いかけるが、 あちらこちらと向きを変えて逃げるので、 なかなか追いつかない。
 縦横無尽の追いかけっこは 止まらない。
「しのぶー、 がんばれー」
 斎布は 気の抜けた声援を送った。

 その時、 浄め石の陰から覗く影があった。
 新たな妖魔かと思えば、 人だ。
 それも 見たことがある人物である。 山の若様だ。
 夜の目辻に出てくるなど なんと非常識な、 と思って 顔をしかめていると、
 「うわああーっ」 斎布を指差して叫んだ。

「えっ、 何。 私?」
 うるさく叫び続ける若様に気を悪くして、 何気なく振り向けば、
 そこに 妖魔がいた。
 一匹だけではなかったようだ。 さすがに 眠気が一気に吹き飛ぶ。
 巨大ナメクジみたいなものが、 斎布に向かって這い寄ってきていた。
 人間よりでかい。

 どうすんのよ、 これ!
 志信は 追いかけっこの真っ最中だ。
 自慢じゃないが、 こんなに大きい妖魔を 一人でやっつけた経験は無い。
「どうしよう。 志信」



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