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天州晴神霊記 第三章――2


 驚いた二人が駆けつけると、
 灯篭にもたれかかるように立つ 不気味な男がいた。

 とっさに志信が、 斎布の背中にしがみつく。
 護衛にあるまじき振る舞いだ。
「あっ、 あれ、 管虫先生……っていったっけ」
 斎布の後ろから、 恐る恐る相手を見定めた志信が、 心底厭そうに呟いた。

 悲鳴が止み、 代わりに 抗議の声が上がった。
「ま、 またあなたですか。
 管虫先生、 突然 変なところから出現するのは止めてください。 驚きます」
 おとなしそうな神官が、 精一杯に声を荒らげる。

「いいかげん慣れてよ。 傷つくなあ」
 暗闇から覗く ぬめぬめと青白い顔は、 人間だと分かっていても不気味だ。
「慣れません。 というか、 本当に止めてください」
 若い神官は涙目だ。
「あちきがこんなに頼んでいるのに、 駄目かい。 色よい返事をおくれよ」
「お断りです。 これでも 端くれとはいえ大神殿の神官です。 無理です」
 言い捨てて、 神官は脱兎のごとく逃げた。

 何はともあれ、 事件というほどのことでもないらしいと、 ほっとしたのも束の間。
「あっ、 こうなったら 君でも良いかな。 ねえ、 あちきと付き合っ……」
 二人に向かって ニタアと笑った管虫に みなまで言わせず、
 志信は斎布の手をつかんで 一目散に逃走した。

「うわあああああーっ!」
 神域を囲む杜のはずれまで走り、 振り切ったのを確認して やっと止まる。

「ものすごく不気味だけれど、 でも、 あの人ってお医者さんなのよね」
 戸惑ったように 斎布が言った。
「だから怖いんじゃないか。 人体実験とかされそう」
「まさか」
「いや、 死にそうな怪我人を探してたし、 切り刻む気かもしれない。
 寒気がする。 あれっ」
 興奮気味にしゃべっていた志信が、 不意に口をつぐんだ。

「うん 。 いるわね」
 異様な邪気が 忍び寄っていた。
 同時に ズリッと地を這う音も聞こえる。
 間違いなく妖魔がいる。
 志信が 腰に付けた竹筒を外した。

 星都の夜は 真っ暗闇にはならない。
 離れた大路灯篭の光石から届くのか、 人家から もれる明かりなのか、
 わずかな光を頼りに 辺りをうかがう。
 
 水そのものに 邪気を祓う力があるわけではない。
 水は 神気も邪気も 共によく通す。
 澱んだ水は 邪気を生み出すことさえある。
 鬼道門の術者たちは、 水に神気を呼び集めることで 邪気を祓うのだ。
 普通の剣では、 気の弱い妖魔を追い払うことはあっても、 滅することは出来ない。

 志信は剣を抜き、 刃(やいば)に竹筒の水をかけた。
 あらかじめ神気を封入してある水だ。

 ズズズッ、 妖魔の影が 浮かび上がった。



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