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天州晴神霊記 第三章 光石――1

 その日、 斎布は志信をお供に 都の東南、 二条大路と四条大路に挟まれた 東雲(しののめ)町に出向いた。
 都の中心を起点に、 鬼道門屋敷とは反対に位置する。
 東雲町は 職人の町である。 大小の工房や、 問屋もある。

 商売人は 噂を気にするが、 物作りの職人は 噂に惑わされることが少ない。
 彼らが相手にするのは 物という確かな現実だからだ。
 そう言う人間がいたので、 様子を見に来たのだ。

 しかし、 期待はどうやら外れた。
 聞こえてくる音や声に、 苛々としたものが感じられる。
 他の町と同様、 目に見えない不安が覆っていた。

「そろそろ引き返さないと、 お屋敷につく頃には日が暮れてしまうぞ」
「そうね、 今日はこの辺で帰ろうか」

 斎布は周りを眺め、 確かめるように気配を感じようとしたそのとき、 鋭い邪気が駆け抜けた。
「えっ、 今のは何?」
「たちが悪そう」
 しかし、 もう近くにはいない。
 とっさのことで 追うことも出来なかった。
「失敗したわ。 見逃してしまった」
「俺らは初心者だ。 しょうがない。 屋敷に戻ったら報告しておこう」

 二人が処分できなくても、 星都の魔封じが働くから、 そうそう大事には至らないはずだ。
 それでも 二人は気配を探りながら引き返した。
 そのせいで 二四ノ目辻まで戻った時には、 すっかり日が傾いていた。

 夜の訪れと共に 邪気は力を増し、 時に 妖魔としての姿を手に入れる。
 白石を敷き詰め、 毎朝掃き清められる都大路の五芒星が 夜の闇に埋もれてしまえば、
 魔封じの役には立たない。
 故に、 夜間に備え、 都大路には 等間隔で石灯篭が立っている。
 数が多い為、 大掛かりなものではない。
 簡単な作りだが、 そこに据え付けてある光石(ひかりいし)が光り、 夜に浮かび上がるのだ。

 はじめは 一つ一つが 淡い真珠色に輝き始めるが、
 やがて共鳴するように 互いに光が引き合って繋がり、
 光の線が、 力強く くっきりとした五芒星を形作る。
 高い空から 夜の星都を見ることが出来たなら、 闇の中に浮かぶ 光の五芒星が見えることだろう。
 まさに『夜の星都』が出現する。

 帰りを急ぐ二人の前に、 光石が ぼんやりと光りはじめた。
「夕方には戻るって言って出たのに、 遅くなっちゃった。
 急がなきゃ、 みんなが心配する」
「そうだな。 神域を突っ切っていこう。 少しは近道になる」

 大神殿のあたりに差し掛かる頃には、 すっかり日が落ちて、
 拝殿の前にある灯篭に 神官が 火を灯そうとしていた。
 大路の灯篭より立派なつくりだが、 装飾過多なのか 機能は劣るようだ。
 小さな明かりが 広がることもなく、 ぽつんと灯る。

「ぎゃあーっ!」
 神官が 悲鳴を上げた。



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