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天州晴神霊記 第二章――13

「へえ、 相手は二人連れの男で、 あっという間に叩きのめされました。
 とにかく 手当てをしてやってください」
「どうせ こいつらの自業自得なんだろ。 悪さばかりしている報いだ」
「そりゃあそうなんですが、 こんなところで死なれちゃ 商売の邪魔なもんで。
 荒い稼ぎをしようと無茶したみたいですね。 良いカモだと思ったんでしょう。
 田舎から出てきたばかりに見える、 呑気そうな 金持ち風ボンボンの二人組みにちょっかいを出して、
 やられたようです」
「やはり自業自得だね。
 死にはしないが、 道端に転がっていたのでは通行の邪魔だから、 薬くらいは塗ってやるわさ」

「荒稼ぎ」とか 「良いカモ」という言葉の端々から、
 志信も やっと悪い人たちだったのだと気が付いた。
「真面目に生きるのが一番だぞ。
 正直のしゃれこうべに神宿る って言うし」
 志信が、 転がっている男たちに 説教を垂れた。
「言わねえ。 ちょっと違うぞ」
 一人が か細い声で反論した。
 

 二五ノ目辻に行き着くまでに、 そこかしこで 四人目のお妃様の噂話をする人たちを目にした。
 「火の輪くぐりの得意な狸娘」やら 「白塗りのお天気お姉さん」やら、
 果ては「九尾の狐が化けた絶世の美女」やらと、 端々に耳に届く言葉が凄さを増している。
 都人の 無責任な噂話のとんでもなさが身にしみる二人だった。

 屋敷に帰ろうとして、 二五ノ目辻を曲がった途端、
 かすかな邪気を感じた二人は 目を見合わせた。
 一瞬身構えたものの、 たいした事もなくかすむように消えた。
 魔を封じる装置としての五芒星の都が、 小さな邪気を祓ったのだろう。
 斎布は 千勢の言葉を思い出した。

『悪霊や妖魔ならば心配はせぬ。 怖いのは人間じゃ。
 都には うんざりするほど人が居る。
 大勢居れば、 中には不心得者もおれば、 不満を抱えて悪意を育てる輩も出る。
 そういうものじゃ。 気をつけろ』

 星都には、 本当に信じられないほど大勢の 様々な人々が暮らしている。
 大勢いるからには 斑たちのような悪い奴らだっている。
 さらには、 各地方からも 日々どんどん人や物が集まってくる。
 様々な事情が絡み合って 渦を巻いているに違いない。

 魔を祓う聖なる都。
 だが皮肉なことに、 ほかならぬ人の心が 邪気を生んでいるのかもしれない と斎布は思った。



                第三章につづく



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