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天州晴神霊記 第二章――10


 ぶらぶらと見物をしているうちに、
 渇いた季節は過ぎて 湿気が増え、 むしむしする本格的な夏に突入していた。
 これでは 単なるお上りさんの都見物だ。
 気がついた斎布は あわてた。
 星都の地理には詳しくなったが、 作戦は何も進んでいない。

「気になっているところがあるんだけど。
 火伏せ神事の後で行った町、 孔雀町って言うんだっけ。
 途中で雨に降られたから、 ほとんど見物出来なかったわ。 続きを見たい」
 何かありそうな気がする。 行き詰った末の単なる勘だ。

「孔雀って 想像上の鳥なんだろ」
 天州晴では そういうことになっている。
「さぞや賑やかな鳥なんだろうな。 やっぱり あの傘を返したいし、 また行くか」
 意見が一致した。
 志信が二本の傘を担ぎ、 孔雀町へと出向いたのだった。

 五条大路を通って進むうちに、
 道端で 立ち話に夢中になっている人々が ちらほらと目に付くようになってきた。
 知り合い同士が 挨拶だけでは済まなくなって、 そのまま話し込んでいる様子だ。

「何か 変わった事でも起きたのかしら」
「聞いてみるか」
「あの調子だと、 そのうち 厭でも耳に入ってくるんじゃないかしら」
 果たして、 傘を返しに行った呉服屋で 早速耳にすることになる。
 居合わせた客たちが 品選びもそっちのけにして 話をはじめたのだ。

「ねえ、 ねえ、 聞きました? 
 帝が 四人目のお妃様をお迎えになるっていう話」
「ええ、 あちらこちらで。
 本当なのかしら。
 帝は すでに三人もいらっしゃるんだから、
 それよりも オクテの東宮さまのほうを 何とかなさらなくてもいいのかしら」
「ええ、 確かな筋からの情報ですから、 間違いなく帝の四人目です」

「きゃあ、 やっぱり。
 先読みの異能をお持ちで、 相場の予想とか 天気予報がよく当たるっていうじゃないですか」
 横から 新たな情報通が乱入した。
「えっ?  嘘―っ、
 あたしは 猫だか狸だかを操って、 火の輪くぐりをさせられるって聞いたけど」
 話に加わる人数が増えて、 どんどんとんでもない方向に進んでいく。

「ちっちっち、 あちしは、 白塗りのバカ殿様の霊を呼べるって聞いたわよ」
「……」
「……」

「…………天気予報
 ……猫と狸の火の輪くぐり
 ……バカ殿の霊……って、 それはちょっと どうなのかしら」
「そうよねえ。 いくらなんでも地味よねえ。
 読心術とか 瞬間移動とかなら 派手でカッコイイけど……」

 そういう問題か! 
 激しく突っ込みたい欲求にとらわれた斎布だった。
 ここまでくると、 『確かな筋』というのも すこぶる怪しい。



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